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中学卒業と同時に、響野一家は東新宿に家を購入し、引越しした。
侑の両親の演奏活動の拠点が、都内がメインになったためだ。
仲の良かった双子の兄弟と疎遠になってしまったが、それでも時々連絡を取り合っていた。
侑は、国公立の東京総合芸術大学附属高等学校の音楽科へ進学し、小学校時代から続けてきたトランペットを専攻。
偶然にも、高校時代のトランペットのレッスン講師は、侑が小学校三年生から師事しているJ響の先生で、高校三年間、更に厳しいレッスンを受け、研鑽を積むことになる。
大学は、附属高校を首席で卒業した事もあり、東京総合芸術大学へ進学。
大学時代になると、演奏する機会が更に増え、吹奏楽団に入団し、演奏会に出演してソロ演奏を披露したり、国内のコンテストやコンクールにエントリーしていく。
この頃の侑は、自分の力量と音楽の方向性に悩み、もがき続けていた時期でもあり、そんな彼を見兼ねた大学時代の恩師が、侑をドイツに留学する事を勧めてきた。
彼の恩師も、ドイツ留学経験者だ。
ドイツには音楽大学や音楽アカデミーが多く存在し、金管楽器の講師陣も素晴らしい先生が多いと恩師から聞かされたのだ。
それに、幼少期はオーストリアに住んでいた事もあり、ドイツ語も話せる侑は両親に相談してみると、二つ返事で快諾してくれた。
両親は、侑の留学を機に、海外からの演奏オファーが増えてきた事もあり、いつか侑が日本で過ごしていく事も考えて東新宿の自宅をそのまま残し、オーストリアへ戻る事を決めた。
大学を卒業した侑は、更に自分の音楽を模索、邁進するために、単身ドイツの有名音楽アカデミーへ留学し、父と母はオーストリアへと発った。
二年間のドイツ留学は、彼にとって演奏面はもちろん、人間的に大きく成長したといっても過言ではない。
ドイツ留学時代に出会った恩師は、トランペット奏者としてはもちろんの事、為人(ひととなり)も素晴らしく、この出会いは侑にとって宝でもあった。
『侑。キミは自分の音楽のマイナス面しか見てない。もっと自分の音楽の良さを見つめた方が、キミは伸びるよ』
侑はドイツの師匠の言葉を胸に、恩師の意向で国際コンクールにエントリーするようになる。
コンクールに出場するには、ピアノの伴奏者も必要になってくる。
そこで侑は、同じアカデミーに通い、ピアノを専攻している同い年の日本人留学生、島野 レナに依頼する事となり、これが二人の出会いとなった。