「だから違う!この地域にはこのモニターから!」
あぁ、声をあげ過ぎてオーバーヒートしそう…
「うへぇ〜…」
現在、私は仕事のペアとなった人間の「ハル」に仕事を教えている最中。
正直骨が折れそう…いや、実際は人間の骨は無いから鉄骨が折れそうね。
だって此奴バカすぎる。
モニターの情報を見て人工太陽の配置と光の当たり方を調節するごく簡単な仕事。
普通は10分もすれば覚えられる簡単な内容…なのに此奴…。
太陽のボタンを押す筈なのに私の担当の部分を押す
別の地域のモニターと見間違える
風向きを変な方向に変える。その他諸々…
(私1人でやった方が断然早いはずなのに…研究員の人は一体何を考えてるのよ…)
私はハルへの怒りを抑える代わりに研究員に怒りの矛先を変えた。
そうよ。実際あの研究員が此奴をペアにしなければ済んだ話。
そんな事を考えているとハルが話しかけて来た
「…、ごめんね。私失敗ばっかで、これじゃあまねのペア失格だね」
「……」
先程までの明るい表情から打って変わってしょんぼりとし、小さな声で謝りだした。
実際こんな失敗ばかりだと私のペア失格…だけど
(…なんだか調子が狂う… 。。)
私は完全に人間を再現した作り物《ヒューマノイド》誰よりも優秀で知能が高い。失敗なんて以ての外。
なのに此奴…ハルの行動や言動は全くと言っていい程分からない。
突拍子も無い事ばかり言ってずっと笑ってる。なのに何よ。いきなり謝りだして…
「あー、もう良い!」
「え?」
ハルには今までのデータと常識を働かせても通用しない。ならば…
私は本棚がある場所へ歩いて1冊の本を取り出した
「データではここに…、あった。」
埃を少し被った青い背表紙の本。最後に開いたのはいつぶりだろうか。
「何?その本」
呼ぶ前にハルは私の隣に立って本を覗き込むようにして眺めている。
ふわふわとした三つ編みが顔に触れて少し鬱陶しいが何故か悪い気はしない。どうしてだ?
「ハル。大変なことにお前は私の想像を超える人間だ。
よって、現代技術では無く古き昔の知識を使う事にしよう。」
「えーっと……それって私がちょースゴイってこと???」
…バカだな此奴。
そんな事を思いつつも私は近くにあった机にハルと向かい合うようにして座った。
「今から勉強をする事にしよう。」
「べ、勉強か…」
「何?嫌いなの?」
「うーん、嫌いって訳でも…特別好きって訳でもない…かな」
ハルは私が出した質問に白黒付かない曖昧な返答をした。
「意味がわからない。物事への気持ちなんて好きか嫌いの二択でしょう?」
「そう?完全な感情なんてないと思うよ?」
「…どういう事よ…」
「さー、わかんない〜!」
えへへ、と笑ってハルは笑顔を見せた。
「あまねは何が好き?」
なんの脈絡も無しにハルはそう質問した。
「…本が好きよ。そうプログラムされているわ。」
「へぇ〜!」
「…ハル…、貴方は本当にデータで表せられない人ね」
そんなふと思った事を呟いた。
「え?なんて?」
…ハルの耳に私の呟きは入らなかったようだ。バカなだけじゃなくて耳も遠いって言うの?
私は軽い溜息をついた後本を開いてハルに仕事の内容を教える事にした。
「つまりここのデータはこのモニターに出るって事?」
「そうよ、だからここは…」
正直驚いた。ハルは物覚えが結構良いみたいだ。
覚える事に時間はかかるものの覚えたらそこから枝分かれして順調に成長していく。
これは将来的にも…いや、将来なんて考えるだけ無駄か…
どうせ人間と作り物《ヒューマノイド》。は違うのだから時の感じ方も違う。
「あまね?」
「何?」
いけない、考え事をしていたらつい周りの事を忘れてしまう…これじゃ優秀な成績を納められるのも夢のまた夢…夢なんて見ないけど…
「あれ、外真っ暗じゃん。」
ハルの言った通り窓の外は暗く雨が降っている
雨が降っている事実に少しガッカリしながら私は寝る準備をする事にした
「あまね、ひゅー…なんとか?ひゅーなんとかも眠るの?」
「ヒューマノイド。データを整理する為にもちゃんと眠るわ。」
眠る前の読書をしている私にハルはいくつか質問を投げ掛けてくる
それは全てどうでもいい聞く必要もない下らない内容だ。
そろそろ面倒になってきたので次の質問で最後にするようにとハルに言うとハルは悩み出した。
どうせ明日もあるのだからそう考えなくても良いのに…そう思っていたらハルは口を開いた
「あまねは何が嫌い?」
「…なんでそんな質問するのよ」
「やっぱ共同生活するならお互いの事は知ってた方がいいかと思ってね!」
「……雨。」
私が嫌いで嫌いでしょうが無いもの。
そして嫌いな理由さえ忘れてしまった自分が惨めに思えるもの。それが雨
「なんで嫌いなの?」
「さっきのが最後の質問って言ったでしょう。早く寝るわよ」
私はそうハルをあしらった後自分の人工知能と繋がっている照明を消した。
「あれ、あまね。寝ないの?」
ベッドに潜りこんだハルが私を見ながらそう言った
「えぇ、寝るわよ。」
「ならベッドは?」
「私は非人間《ヒューマノイド》。ベッドで寝たりはしないわ。」
「え!そうなの!? 」
また当たり前の事に尋常じゃない程驚いている。本当にバカね
「そうよ、だから早く寝たら…」
「なら一緒寝ようよ!」
は?と声を出して言ってしまった。何を言っているんだ此奴
「別にベッドで寝ても大丈夫でしょ?」
「まぁ…そうだけれど」
「なら寝よ!親睦を深める為にも!」
へへっと得意げに笑いながらハルはこれでもかと言わんばかりにベッドのスペースを空けた。
「はぁぁぁ…」
深い溜息を吐いて私はハルの隣に寝転んだ。
「えへへ、暖かいでしょ〜」
「早く寝たら。明日も仕事よ」
そう言って私は文句を言うハルに背を向けた。
ハルが眠って5分後、後ろからは吐息が聞こえてくる。
つくづく変なヤツだ。表情がコロコロと変化してデータで対応出来ない事しかしない。
こんなに苦労したのは初めてだ。
「…変なの」
そう小さく言った後私は何処か暖かくなった胸に手をあて、眠ることにした
「スリープモードに入ります」
普段とは違う人間に寄せた声でなく機械音声を口にし私は無意識を漂った。
コメント
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可愛いッッッッ ……これって、受け側って誰すか((
あのこれってハルアマですか?アマハルですか?(クズ)