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雨と君と私と___

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雨と君と私と___

3 - 第3話「感情という名のバグ」

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2024年03月29日

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「おはようございます。本日の天気は曇り時々晴れです。」

爽やかな音楽を身体から流し私は目を覚ました。

自分の意志とは反して毎日目が覚めた時に言う様にプログラムされている言葉にうんざりしながら

横に眠っているハルに目をやった。

最初に出会った日から1週間、毎晩一緒に寝ようと言われ渋々一緒のベッドに横たわる生活を送っている。

ハルはまだ眠っている様で頬を軽く叩いても起きようとしない。

(先に着替えておくか…)

そう思い私は部屋に設置されている洗面所に向かう。


軽くシャワーを浴びた方がいいかと思い服のリボンを解きワイシャツを脱ぐ、

するとふと鏡に映った自分の姿が目に入った。

「…… 」

最新技術により生み出された人間に最も近いとされた優秀な存在。そう言われても私は所詮偽物。

この薄橙色の素材の下は内臓や骨も無く只々金属が敷き詰められているだけで空っぽ。

きっと私の事を切っても血は出ずにネジやコードが代わりに出るのだろうか。


そんな事を思っているとドアが開いた

「うわぁッ!あまね!?」

「あぁ、ハル。おはよう」

普段のふわふわの髪とは違い寝癖のせいでか全体的にボリュームのある髪型になっている。

こういう動物を本で読んだことがある。確か…

「ライオン」

「え?」

「気にしないで頂戴。 」

「え…あぁ、うんって、違う!服!なんで裸なの!?」

「なんでって…シャワーを浴びるからよ」

ハルは一体何言ってるんだろうか?

ハルは私の事を服を着たままシャワーを浴びる程バカだと思ってるのかしら?

「タオル巻いて!風邪ひくよ!」

そう言いながらハルは私の身体に何処からか持ってきたバスタオルを巻いた。

「私は風邪なんてひかないわ。」

「それでもダメ!」


シャワー終わったら呼んで。とハルは言って出て行ってしまった。

シャワールームのドアを開けシャワーを浴びてシャンプーを出した。

ハルと出会ってからのこの1週間、少々距離が近いものの悪い人だとは思わない。

結構優秀な方だし思考が活性化してそれなりに良い。

だけど悩みもある。

ハルの行動は予測不可能でデータ化が出来ない

正直完敗だ。けどそう言うのは私のプライドが許さないから絶対に口にしない。

それでも実際ハルはよく分からない。


データに出来ない事しか言わず私の髪や頬を触ってくる。

それに何故かハルに顔を近づけられたら全身の温度が上がる気がする。

もしかして故障…?けどこんなデータは今まで…

「…もしかして…私が初めての特例…!?」

そうよ、絶対にそう。今まで無かった問題が今後起きる可能性だって大いにある。

なんでそんな初歩的な事を忘れていたのよ!

そう思ったらすぐに行動に移さなくちゃ!

私はシャンプーを洗い流すのも忘れて一目散に走った。


「あまね!?」

途中でハルの声が聞こえた様な気もしたけど…気の所為ね。うん


私はデスクに座り首元からコードを出しある機械に繋げた。

この機械は俗に言う電話の様なもので機械に繋げる事により向こう側にいる人と

会話を行う事が出来るという物だ。

「研究員さん!システムエラーが発生してしまいました…!」

[落ち着きなさい。一体どの様なシステムエラーなのかな?]

そうすると数秒もしないうちに初老の穏やかな男性の声が聞こえた。

この人の事は知っている。私を生み出した研究チームの人だ。

まだ知能が未発達だった私がお世話になった方で私が「先生」と呼んで慕っている方でもある。

「は、はい…実は…」

私はとにかく一体落ち着いて先生にシステムエラーの内容、

そのシステムエラーが未知の存在だという事を伝えた

[ん〜…..]

「先生?」

先生の少し困った様な声が向こう側から聞こえる。

[それは、システムエラーでは無いんじゃないかなぁ]

私は思わず声をあげてしまった。システムエラーじゃない?なら何?

「あの…システムエラーじゃないって…」

[私が断言できることは出来ないが…、]

数秒の沈黙の後先生の声が聞こえた

[感情だよ。]



私は耳を…音声聞き取り機能を疑った。

私に感情?そもそも感情って?先生は何を言っているの?

人工的に作られた私の脳内にそんな考えが巡った

「あの…非人間ヒューマノイドの私は感情など持っていない筈です。

感情など…何かのバグでは…」

[だけどねぇ…え、あぁ、…]

先生は向こう側で誰かに話し掛けられたそうだ。何か相槌を打っているみたいだし…

[すまない、『AMANE』急遽仕事が入ってね。また今度続きを話そう。]

「はい、わかりました。」

ではまた。と言い私は機械からコードを外した。

「あまね〜、髪くらい乾かそうよ〜」

背後から声が聞こえ振り向くと私の髪を乾かしているハルが居た。

この機械のデメリットは繋げている間は外野からの声と刺激に反応出来ない。

今までは1人だったから特に問題は無かったけどハルが居るのなら これからは

何かしら影響がありそうね…

「ごめんなさいね、ありがとう。」

「んーん!大丈夫だよ〜!今度からは風邪ひかないようにちゃんと拭いてね!」

だから私は風邪をひかない。なんて言葉を1度飲み込みハルの緑色の瞳を眺めた。

曇りのないキラキラとしている、私とは違うごく自然な瞳。

まるでハル本人の心を表している様な瞳。

なんとなく羨ましいなと思ってしまった。あれ、けどなんでこんな事を思うのかな?

私はそんな事を思わない。だって私は『AMANE』。感情や無駄な思想なんてとっくの昔に…

いや、もういいか。うん。

「ハル、私は服を着て来るから朝食を食べに行ってて。」

「あまねは?一緒に行こ!待っとく!」

「何回も言うけど私は非人間ヒューマノイド。食事は摂らなくても良いの」

「やだやだやだ!一緒に行く!一緒に食べるの!」

子供みたいに床に寝転がって足と手をバタつかせながら駄々をこね出したハルに冷ややかな目線を送りながらクローゼットに向かった。


ワイシャツのボタンを留めてリボンを付けベストを着て靴下を履く。

身の回りの準備を終えた後私は考え事に浸った。

(感情…感情?)

人間の所有物、つまり使い捨ての存在として作られた物に感情がある?

そんな事があっては困るのは人間だ。

それに、感情なんて物があったら_____


『AMANE』の価値なんて無いのだから。」

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