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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第57話:通信障害発生! 主のルーター最適化スキル〜吹雪の夜と、YAMAHAの絶対防壁〜
居間に鎮座するYAMAHA製ルーターのインジケーターが、不吉な『赤色』の点滅を繰り返し、光回線の完全な切断を告げていた。
猛吹雪による物理的な断線か、それとも基地局のダウンか。
いずれにせよ、それは俺たちインフルエンサーにとって、食料の枯渇よりも恐ろしい『社会的な死(オフライン)』を意味していた。
「お、お兄さん……スマホの電波も圏外です! 配信画面がクルクル回ったまま、完全に止まっちゃいました……!」
小春ちゃんが、青ざめた顔で固まったスマホ画面を見せてくる。
「……最悪だ。雪による陸の孤島化は耐えられるが、ネット回線の切断だけは許容できない。俺の数少ない娯楽(リスナーとのプロレス)が奪われるなんて、死活問題だぞ」
俺は、シロの『適温25度の絶対防壁』で温められたこたつから、ガバッと勢いよく這い出した。
そして、シロの純白の毛並みから放たれる真珠色の光(非常用自家発電灯)を頼りに、納屋へと繋がる廊下を小走りで進んだ。
数分後。
「お兄さん、何を持ってきたんですか……? それ、パソコンの機材……?」
暗闇の居間に戻ってきた俺の両腕には、厳重な黒いケースが抱えられていた。
「ああ。居間に設置してあるYAMAHAのルーター自体はUPS(無停電電源装置)で生きているが、大元の光回線が死んだ以上、物理的な別ルートが必要だ。だから、俺の隠し財産(追加のガチ機材)を引っ張り出してきた」
俺はケースを開け、中から厳重に保管されていた機材を取り出した。
「USBポートに直挿しできる『バックアップ用LTE通信モジュール』。そして、その貴重な電波を家中に広範囲に飛ばすための、BUFFALOのハイエンドWi-Fiルーターだ。アンテナが8本も生えてる、通称『メカ蜘蛛』。ブラック企業時代、社内ネットワーク構築を丸投げされた時に自腹で買い集めた、俺の最高の相棒たちだ」
「ル、ルーターを自腹で!? お兄さんのブラック企業のエピソード、毎回ベクトルがおかしいですよ!」
俺は非常用のポータブル電源(大容量バッテリー)を起動し、ノートパソコンとBUFFALOルーターに電源を供給した。
「でもお兄さん、光回線の大元のケーブルが吹雪で切れてたら、どんなにすごい機材でもネットに繋がりませんよね……?」
小春ちゃんの正論。
だが、元・限界社畜の兵站(ロジスティクス)管理は、そんなことは百も承知だ。
「フッ、甘いな小春ちゃん。俺を誰だと思ってる。大雪で有線ケーブルが死ぬことくらい、北海道の冬をなめるなと予測済みだ」
俺は、稼働中のYAMAHAルーター『RTX1210』のUSBポートに、あらかじめ契約しておいた非常用のモバイル通信モジュールをカチャリと差し込んだ。
「スマホの基地局が死ぬことも想定して、このモバイル通信モジュールには『スマホとは別キャリアの物理SIM』を挿してある。メインの光回線がダウンした瞬間に、生きている別キャリアのモバイル回線へとルーティングを切り替える『マルチWAN(キャリアの冗長化)』環境だ。シロ、ちょっとこっち来てキーボードを照らしてくれ」
『ミャウ』
ランタン代わりに発光するシロ(神獣)の光を浴びながら、俺はノートパソコンの画面に向かった。
そこには、グラフィカルな設定画面ではなく、真っ黒な背景に白い文字だけが羅列される『コマンドプロンプト』の画面が開かれている。
「さあ、行くぞ。オペレーション・ネットワーク・リストア、開始」
俺の両手が、キーボードの上で残像を描き始めた。
カタタタタタタタタッ!!
『ip route default gateway…』
『lan type lan1…』
『backup interface…』
「えっ、えええ!? お兄さん、マウス全く使ってない! 呪文みたいな英語をものすごい速度で打ち込んでます!」
小春ちゃんが、俺の異常なタイピング速度に目を丸くする。
設定画面(GUI)など使わない。コマンドライン(CLI)で直接ルーターの深淵にアクセスし、最適なルーティングを一から手打ちで構築していく。
それは、連日の深夜残業でネットワークトラブルをたった一人で解決させられ続けた、社畜の血と汗と涙の結晶であった。
「……NATディスクリプタの設定よし。DNSルーティングよし。BUFFALOのブリッジモードとのセッション確立……よし!」
カッ、ターンッ!!
俺が最後にエンターキーを力強く叩き込んだ、その瞬間。
ピピピッ……。
赤く点滅していたYAMAHAルーターのランプが、フェイルオーバーを完了し、鮮やかな緑色に点灯した。
続いて、BUFFALOの8本のアンテナを持つルーターも、通信確立のランプを輝かせた。
「小春ちゃん、スマホの画面を見てみろ」
「あっ……! スマホの電波は圏外のままですけど、Wi-Fiの扇のマークがマックスで立ってます! ネット繋がりました!」
プツン、と途切れていた俺の配信ソフトの画面が、一瞬の暗転を経て、再び光を取り戻した。
「……世界中の皆さま、お待たせいたしました。通信障害、これにて復旧です」
俺がカメラに向かって静かに宣言すると、止まっていたチャット欄が、堰を切ったように爆発的な速度で流れ始めた。
『うおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
『繋がったァァァァァァァァァ!!!!』
『主生きてた!! よかったああああ!!』
『えっ!? 停電してて外は猛吹雪なのに、なんでネット繋がってんの!?』
『待って、画面の奥に青い弁当箱(YAMAHAルーター)が見えるんだがww』
『うわあああ! ガチの業務用ルーターRTXシリーズじゃねえか!!』
『アンテナ8本のBUFFALOルーターとの狂気のコラボww』
『一般家庭の限界集落に置く機材じゃないwww』
「ご心配をおかけしました。光回線がダウンしたため、YAMAHAのルーターに事前に仕込んでおいたバックアップ回線へとコマンドで手動フェイルオーバーさせ、BUFFALOルーターで電波を最適化しました。ええ、元社畜のインフラ構築としては基本のスキルです」
「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、たまらずツッコミを入れる。
「一般の会社員が、コマンドラインで業務用ルーターを自力復旧させるわけないでしょ!! どう見ても凄腕のインフラエンジニアの動きでしたよ!!」
『小春ちゃん、今日も正論ありがとうww』
『主、ついにネットワークエンジニア説が浮上』
『需品科上がりで、クレーマー対応のプロで、インフラエンジニアww』
『ハイスペックすぎる限界社畜』
『(シリコンバレーのIT社長からの$500MeTubeギフト)=”Master! Come to my company! I will hire you as CTO!“(主よ! 私の会社に来い! 最高技術責任者として雇う!)』
「シリコンバレーの社長さん、MeTubeギフトありがとうございます。ですが、俺はこのこたつとシロ様のオーラの中から一歩も出る気はありませんので、辞退させていただきます」
俺はほうじ茶を一口啜り、ふぅと息を吐いた。
猛吹雪による孤立。停電。そしてネット回線の断絶の危機。
普通ならパニックに陥る絶望的な状況も、俺がこれまでの人生で培ってきた『社畜スキル』と、シロという『最強のバイオ蓄電池(神獣)』の前では、ただのちょっとしたスパイスに過ぎなかった。
『ミャウ(私の光のおかげね)』
キーボードを照らすという重要な任務を終えたシロが、得意げに喉を鳴らして再び俺の膝の上に丸くなる。
外の猛吹雪は、一向に収まる気配がない。
だが、YAMAHAとBUFFALOのルーターが緑色のランプを力強く点滅させるこの部屋だけは、世界中と繋がる最強のセーフティゾーンとして、ポカポカと温かく保たれ続けるのだった。
コメント
1件
えっ第57話読み終わったよ!?!?😳💦 吹雪で通信障害からの、主のルーター手動復旧マジでカッコよすぎるんだけど…!!!ゆうきあきやさん、コマンドラインでYAMAHAルーターをガチ設定する主人公とか神すぎるでしょ🥺💕 シロちゃんの光でキーボード照らすシーンもエモいし、小春ちゃんのツッコミも毎回冴えてるね! シリコンバレー社長からのCTOオファー断ってこたつでほうじ茶とか、最高の社畜ライフスタイルだよ…⋆♡ 続きが待ち遠しすぎる!!