「よいっしょっと。」
お母さんが私を抱えながら段差をジャンプする。ここを道と言っていいのかわからないが私達は今お屋敷に向かって山を登っている。私達の家は山の方にあり、街からでもうっすら見える位置にある。でも、段差が激しくて激しくて、きつい。マジで、きつい、お母さんが。これでも一応貴族夫人と貴族令嬢何だけどなぁ、おかしくない?いや、この世界がどんな世界か知らんから何も言えんけど。普通、貴族って、優遇されない?おかしいちゃいますか?それとも何?ここの世界の基準では貴族夫人&貴族令嬢は絶対にサイバイル経験を積まなきゃいけんの?もしそうだったら、この世界の神に殴り込みに行く。絶対行く、お母さんが。
「ふう、ごめんね、大変だね。もう少しの辛抱だからね。」
お母さんはそう言って私に微笑みかけた。うわっ、まっぶし。お母さんは聖女かよ、と思うぐらいの美貌の持ち主だ。しかも、優しいし。誰だ!こんな美人に殴り込みに行かせると言った奴は!?……はい、白状します。私です。
暫くして、やっとお屋敷の前に到着する。私達の住んでいるお屋敷は無駄に広い庭を持つこじんまりとした屋敷。って、言っても私達二人だけでここに住んでるから問題は無いんだけどね。そう、私達はこのお屋敷に二人だけで住んでいる。いや、盗賊とか何やらが来たらどうしろっちゅうねん。最近分かった事として私達はどうやら嫌われものらしい。現に父親にもあったことないし。それにメイドさんの一人も居ないからお母さんがテキパキと一人で働いている、と言うわけでは無い。いや、ね。私もびっくりしたわ。だって、お母さんが突然陰から黒い人形を作って指示してんだもん。そりゃ、びっくりもするわ。どうやらこの世界には魔法があるらしい。それしか知らないけど多分、そう。
「よいしょ。ここで大人しく寝ててね。」
お母さんは私をベビーベッドにのせてまたテキパキと仕事に戻る。まだ顔の知らぬお父さんや、こんな美人な妻を放っといて何しとんねん。少しぐらいは手伝えや、このボケカスハゲ爺めが。おっと、最後の方に少し本音が混じってしまったけどこんぐらい思ったってバチは当たらないよね。だって、クソじゃん。妻子供を放って置いて、何処に行ってんだ。まあ、ろくなやつじゃ無いのは確かか。そんなクズにお母さんは渡さない!私が転生したての頃、精神的にも辛かったとき、唯一お母さんだけが私を見てくれて、愛してくれた。だから、私は立ち直る事が出来たのだ。私はそんなお母さんを助けたい。守りたい。一緒にいたい。だから、私はその願いを叶えるために頑張ってやる!
__開章、少し先の未来で1
私は浅はかだった。あのときから我儘で傲慢で、人を見下して、とにかくとても最低な人間だった。都合がわるくなったら友でも何でも捨てる。そしてまた新しいのを補充する。まるで使い捨てのごとくに。今はもう没落してしまったが私はセレスツィアナ・クィアトベル公爵令嬢だった。そのため、学園に入っても家の権力で人を言いなりにして従わせていた。でも、そんな私にある厄災が降り掛かった。それは私に生き別れの双子の妹がいたことだ。妹は庶民として暮らしており、それを見つけた公爵家が保護したのだ。妹は勿論、学園に入り、悠々自適な生活を送ることになたった。私はそんなぽっと出の妹が気に入らず嫌がらせをしていた。パーティのドレスを汚して出れなくしてやったり、ものを隠したりなどなど。まあ、結果的に婚約者だった、王子にも婚約破棄され、公爵家からは田舎の子爵家に嫁ぐように言い渡された。これが発端。あのときは人生の終わりと思っていたけど、今は娘が居る。自慢の娘だ。何事にも冷静に切り返し、少なからず親友とよべる子が居る。でも、短所は堪忍袋の尾が切れたら暴走してしまうところかな?全く誰に似たのやら。でも、これだけは言える。私は拳を握り力を振り絞る。貴方は私の自慢の娘だよ、と。
「小さい頃みたいにもう風邪を引かないのよ。」
そう言って私は理不尽な人生と幸せだった日々を思い出しながら、前へと拳を振りかざした。
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