走る。無駄に広い廊下をただただ駆け回る。しかし、幼女の足では到底大人の足などから逃げられることはない。だが、幼女は幼ながらに小回りがきくため、わざと部屋に入り、回り込む作戦に出た。幼女はドアに背中を預け、ハンターが来るのを待つ。
ギィ…
ドアが音を立て、開かれる。
今だ!
幼女はハンターの足の間を潜る。作戦は成功。見事を通る事が出来た。潜ることは、だが。
「はい、捕まえた。逃走中終わり。」
ハンターはヒョイと幼女を持ち上げニコニコしながら幼女の頰をつつく、って、そこ、ほっぺじゃない!そこ、顔の下!イコール、こちょこちょになっとる!ちょっと、こちょばいって!
「こちょばい、やーめーて。」
「可愛いから、やーだ。」
こちょばっ!ごめんなさい!逃げた私が悪うございました!
「ごめんなさい。わかった、きく。」
「うむ、それでよろしい。」
お母さんは部屋の椅子に座り、私を膝に乗せる。はい、茶番は終わりです。初めからハンター何て居なかった。ハンターぽい女の人なら居たが。後、3才で走り回る幼女も居たが。
「ユフェルナ?どうしたの?」
お母さんが暫くの間沈黙だったことが気になったのか、心配そうに私の顔を覗き込む。
「ううん、大丈夫。」
今はお母さんの話を聞かなくては。私はお母さんの目をジッと見る。あの、お母さんと頑張る宣言してから早2年半。私は立派な幼女となっていた。言葉も話せるようになったし、言語も読めるようになった。まだ全然だけど。そして、ちなみにその間に父親も、その他の家族も誰ともあったことがない。音信不通。お母さんも話したがらないのでスルーしてたけど、今回は違いそう。お母さんが一昨日ぐらいからずっとモジモジしてたのは知っていた。だから、今日、声をかけられたときに逃げたのだ。場を和ませるために。決して、決ーっして、難しい話が嫌で逃げたわけではないのだ。
「あのね、お母さんね、」
うんうんと頷きながら話を聞く。
「お、王室のお茶会にご招待されたの!」
な、何だってー!?
「へー、そうなの?」
びっくりした。何か深刻な話かと思ってたら違った。お茶会でうふふん、あははんする話だったわ。良かったね、行ってらっしゃい。
「ユフェルナがね。」
「な、なんだってー!?」
今度こそ驚いた。ガタンと椅子の上に立ち両手を机の上にうつ。
「そうなの。だから心配で……それに彼奴等なら変な事言うだろうし。」
ドサクサに紛れて、チッとお母さんが舌打ちする。駄目です。淑女がそんなことしては。
「本当に、どうしよ。マナーも教えてないし、それに断るにしたってどうせあのバカ女が無理やり持っていくだろうし。何のつもりよ、あのバカ女。もう、私が貴方に関わることはありません!何て言ったくせに。」
お母さんは次々と愚痴を漏らす。何があったかは知らないけど、淑女がそんなこと言ってはいけません!
「おかあさん、いくの?」
私がこの何とも言えない闇を消し去るべく話題をそらす。
「うーん。どうしよ……。」
お母さんはかなり悩んでいるが、実はのところ私のマナーに関しては大丈夫だ。お母さんは気づいてないかもしれないが、貴方、とっても仕草が綺麗なんですよ。そりゃ、そんな人を精神年齢15才とプラス3才のこの私が真似してたら自然とマナーは身につくよね。へっへーん。私って、天才だからね!でも普通に、笑われないぐらいにはなってるはずだよ?
「だいじょうぶ。わたし、まなー、しってるから。おかあさんのみて、おぼえたの。」
私は椅子から降り、お母さんに向かってお辞儀をする。正直、お母さんがこれやってるの見たこと無いけど大丈夫っしょ。
「ドレスを掴む場所が左右対称になってない。あと、足は同じ向きに揃えること。そして軽く頭を下げる動作はなってるけど、まだ小さい子は深々と頭を下げて可愛らしい動作の方が、好感をもたれやすいから、後30度下げて。」
「…え。」
「こら、顔をそんなふうに上げたら足のバランスが崩れちゃう。あ、もー、ほら。一からやり直し。はい、もう一回。」
「…え。」
お母さんの目が急に鋭くなり、私にあれやこれやとテキパキ指導する。待って、お母さん待って。やめて、怖いよ、その目。私は咄嗟に、指摘されたところを頑張って訂正し、お辞儀を再チャレンジする。が。
「足とスカートは良くなったけど、頭を下げすぎ。これじゃ、見っともないわ。後10度上げてみて。」
私は言われるがままにそのとおりに実行する。
「よし、これでお辞儀は完璧よ。」
ふう、良かった、これで開放される。私は胸をほっと撫で下ろす。
「次はテーブルマナーと、上流階級への方々への挨拶に言葉づかいね!」
「…え。」
このあと、私は軽々しくお母さんの前でお辞儀をしてしまったことに酷く後悔することになる。
「はい、良く出来ました。本当に覚えが早いからこっちも教えてて嬉しいわ!でも、予定より早く終わってしまったから、貴族学を勉強しましょうか!」
な、なんですと!?いや、もしかしたらそうなるかも、って、思ってたけどさ!
「まずは、今度お茶会にくるご令嬢の名前と家名を覚えましょうね。」
お、お母さんのぉ、バカァー!私は何処ぞのメイちゃんのような台詞を吐きながら一心不乱に貴族の名前を覚えた。途中で、部屋から抜け出したりなどの手を尽くしたが、逃走出来たかというと、否。お母さん、もうちょっと手加減してくれても良いんですよ、って、くらいに猛スピードで追いかけてくる。お母さんのぉ、バカァー!
「はいはい、こっちにいらっしゃーい。でないと……ね?」
私は半強制的に椅子に座らせられる。はい、死にとうないので座ります。怖い。マジで怖い。狂乱の母になってはる。
「よーし、じゃあ、授業を再開しましょうか。」
お母さんは何やら本を取り出しページをめくりだした。
ソノです。次回はこの国の名前。流行。この国の貴族の名前。他の国の最近の情報、その他色々をまとめておうくりします。基本的にはユフェルナ視点ですが、分かりにくいと思うのでダイジェストに資料にまとめてる感じにします。では、アディオス。
コメント
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本当に……現実でもスパルタ。特に理数系に厳しい。
お母さんスパルタ……ガタガタ