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4件
こころが通じ合ってる感がたまらない~ 続き楽しみに待ってます

めちゃ楽しみにしてますっ!!!
地方公演の夜。同室になった二人の部屋は、静かだった。
テレビもついていない。BGMもない。
聞こえるのは、加湿器がシュウシュウと蒸気を吐く音と、衣擦れの音だけ。
渡辺翔太はベッドに寝転がってスマホを眺め、阿部亮平はサイドテーブルの明かりで本を読んでいる。
会話はない。けれど、そこには冷たい空気など微塵もなく、ただただ心地よい「凪」のような時間が流れていた。
「……あー、目ぇ疲れた」
渡辺がポツリと呟き、スマホを枕元に放り投げた。
すると阿部が、本から視線を外さずに穏やかな声で返した。
「蒸気でアイマスク、あるよ? 使う?」
「んー……あとで貰う」
渡辺はゴロンと寝返りを打ち、本を読んでいる阿部の背中を見つめた。
集中している阿部の横顔は静かで、知的で、見ていて飽きない。
「……なぁ、阿部」
「ん?」
「こっち来いよ」
唐突な呼び出し。
阿部は「え?」と少し驚いた顔をして、ようやく本を閉じた。
「どうしたの? 何か取ってほしいものでも──」
「違う。……ただ、近くにいろってこと」
渡辺が布団をめくり、隣のスペースをポンポンと叩く。
阿部はふわりと笑うと、文句も言わずにベッドへ移動し、渡辺の隣に腰掛けた。
「……翔太は、寂しがり屋だなぁ」
「うるせぇ。……お前の空気が一番楽なんだよ」
渡辺はそう言うと、座っている阿部の太ももに、ゴロンと頭を乗せた。
自然な流れでの膝枕。
阿部も慣れた手つきで、渡辺のサラサラな髪を指で梳き始めた。
「……ん……」
「お疲れ様、翔太。……今日は喉、辛そうだったね」
「……バレてたか。……ケアしねぇとな」
渡辺が目を閉じる。
阿部の指先が、優しく頭皮をマッサージしてくれる。
そのリズムが、渡辺の呼吸と完全にシンクロしていた。
「……なぁ」
「なに?」
「……俺ら、なんも喋んなくても平気だよな」
「そうだね。……無理しなくていいから、楽だよね」
阿部が優しく微笑む気配を感じて、渡辺は目を開けた。
上から見下ろす阿部の瞳は、どこまでも優しくて、甘い。
「……お前といると、オフになれるわ」
「ふふ。……いつでもオフにしにおいで。俺が受け止めるから」
渡辺は腕を伸ばし、阿部の首を引き寄せて、その唇に軽くキスをした。
「……サンキュ。……好きだわ、お前のそういうとこ」
「……俺もだよ、翔太」
派手な言葉も、過剰なスキンシップもいらない。
ただ隣にいて、体温を感じるだけで満たされる。
なべあべの夜は、この上なく静かで、とびきり甘いリラックスタイムに包まれていた。
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