テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
41
5,678
零 .
3,089
翌朝。
龍斗はいつもより早く目を覚ました。
「……最悪や」
目を開けた瞬間、昨日の出来事を思い出してしまった。
『君が私から離れることは、許可していないよ』
「……なんやねん、あれ」
布団の中で頭を抱える。
冗談だったのかもしれない。
ただのからかいだったのかもしれない。
そう思いたい。
けれど――。
「……気になるやん」
結局、龍斗はいつもの場所へ向かった。
廊下を歩いていると、前方から人影が見えた。
「……あ」
少佐だった。
向こうもこちらに気づいたらしい。
「おはよう」
「……おはよ」
「来てくれたんだね」
「いや、別にあんたに会いに来たわけちゃうからな?」
「そうかい?」
「そうや」
少佐は笑った。
「それでも、君が来たことは嬉しいよ」
「……そういうこと平気で言うんやめてくれへん?」
「なぜ?」
「なんか調子狂うねん」
「面白い反応だ」
「またそれや!」
龍斗が睨む。
しかし少佐は気にした様子もなく、主の横を通り過ぎた。
「少し付き合ってくれ」
「どこ行くん?」
「秘密だ」
「いや、怖いって!」
「大丈夫だよ」
「その台詞、全然安心できへんねんけど……」
連れてこられたのは、誰もいない部屋だった。
龍斗は中を見回す。
「……何ここ」
「私がよく使う部屋だ」
「なんで俺をここに?」
少佐は答えなかった。
ただ、机の上に置かれていた一枚の紙を手に取る。
「これを見てほしい」
「?」
龍斗が紙を受け取る。
そこには、昨日の出来事が細かく記録されていた。
「……なんやこれ」
「君についての記録だよ」
「いや、待って」
龍斗の顔が引きつる。
「なんで俺のこと、こんな細かく書いてんの?」
「興味があるからだ」
「怖い怖い怖い!」
思わず紙を机へ戻す。
少佐は静かに笑っている。
「君は昨日、私が近づいたときに三歩下がった」
「……」
「しかし、帰るときには一度もこちらを振り返らなかった」
「……なんでそんなことまで覚えとんねん」
「覚えているとも」
少佐は淡々と言った。
「君のことだからね」
龍斗は言葉を失った。
胸の奥が、妙にざわつく。
怖い。
なのに――。
ほんの少しだけ、気になってしまう。
「……俺の何がそんなに気になるん?」
少佐はしばらく黙っていた。
そして。
「まだ分からない」
「……え?」
「だから知りたいんだ」
少佐の目が、まっすぐ主を捉える。
「君が何を考えているのか」
「……」
「何を恐れているのか」
「…………」
「そして、何を望んでいるのか」
龍斗は視線を逸らした。
「……そんなん、俺にも分からへんわ」
「なら、一緒に探せばいい」
「……ほんま、勝手やな」
「そうかもしれないね」
少佐は微笑んだ。
その笑顔を見て、龍斗は思う。
――やっぱり、この人には敵わない。
そして同時に。
――もっと知りたい。
そう思ってしまった自分が、一番怖かった。
コメント
1件
第2話、めっちゃ面白かったわ!少佐の「君のことだからね」が完全にストーカーじみてて怖いのに、主のツッコミが軽快で笑った。「調子狂うねん」って関西弁のテンポがいいし、少佐の「まだ分からない→だから知りたい」の流れがゾクゾクする。あの記録ノートも気になるし、距離感が絶妙で続きが待ちきれん🔥