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青い春を想う

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青い春を想う

2 - 第2話 アイスキャンディー

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2025年03月21日

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山あいの集落であるこの六色村から隣町の県立高校に通う学生は全部で5人だ。


1年生は村長の孫りうらと幼い頃家族で移住して来た初兎、お寺の住職の末息子であるほとけの3人。

2年生は農家の息子悠祐とないこの2人だ。

ないこは母がこの村の出身で、県外で結婚したあと離婚を機に戻って来た。ないこが小学5年生の頃だ。


それまで都会で暮らしていたないこにとって、田舎での暮らしは退屈でなかなか馴染めなかった。

しかし同級生の悠祐を筆頭に同年代の村の子供達は、遠慮なくないこを仲間の輪に取り込んできた。元々ないこは社交的な性格である。彼らと仲良くなるのに時間はかからなかった。

今では隣町の高校に通い街の同級生らと交流しながらも、田舎の落ち着いた暮らしを心地よく思うくらいには村の生活に馴染んでいる。


「みんなービックニュース〜!!」

この小さな村での情報源はほとんどが村長宅からもたらされる。

その日も村唯一の駄菓子屋の前でアイスキャンディーをかじっていたないこ達に、その情報をもたらしたのは村長の孫りうらだった。

「今度引っ越してくる奴いるみたいよー!」

「引っ越し?また移住者かな。」

悠祐がちょっと複雑な顔をする。


数年前から田舎暮らしに憧れた移住者が時々引っ越してくるようになった。この村でも空き家をリノベーションして、積極的に移住者を誘致しているようだ。

「また、すぐ居なくなるんじゃねーの?」

ほとけがアイスキャンディーの棒を咥えながら、つまらなそうに言う。

時々移住者の話は聞くものの、田舎の暮らしに馴染めずに出ていく者がほとんどだった。

「残ってんのってしょうちゃんのトコくらいじゃね?」

ほとけが初兎に視線を向ける。

「うーん、ウチは妹が体弱いし、ここ空気いいし、まぁ家族みんな気に入ってるんじゃない、たぶん」

初兎は素っ気なく言うと、猛暑で溶け始めたアイスキャンディーを慌てて口に入れる。

そんな初兎にほとけは何か言いかけたが、結局はりうらに向き直り言葉を発した。

「来るのどんな奴ー?」

「父ちゃん母ちゃん息子の3人家族。息子はアニキやないくんと同じ高2。こないだ速攻で若夫婦が引っ越していったあのオシャレな古民家に入るって。またいつまで持つかなーって親父たちが話してたよ。」

この村にプライバシーは無い。


「へぇ、息子高2って。また微妙な時期に引っ越してきたな。」

悠祐が意外そうに言うと、りうらがやや声のトーンを落としてそれに答えた。

「母ちゃんの方があまり体調よくないらしいよ。」


「なんか移住してくる奴って、そんなんばっかじゃね?いい空気が〜とかのんびりした生活が〜とか、さ。」

ほとけがうんざりして言うと初兎はムッとして口を尖らせた。


初兎には妹が2人いるが、すぐ下の妹は生まれつき体が弱く、その療養も兼ねて空気の澄んだこの土地に引っ越してきた移住組だ。

もちろん初兎たち兄妹にも自然の中で育ってほしいと言う両親の思いもあった。


ほとけは一瞬「しまった」と言う顔をしたが、なんとなく謝れずに気づかなかったフリをした。

最近初兎とは時々こういうすれ違いを感じることがある。

(やっぱりしょうちゃんも高校卒業したら村を出てっちゃうのかな…。)

たぶんそうなんだろうな、とほとけは思う。

ほとけの上の兄達も大学進学と共に村を出て、最近は盆と正月に帰省するくらいだ。

たぶん寺を継ぐ気も無い。

残された末っ子のほとけは逃げられない。

…貧乏くじを引いた気分だ。

(寺の坊主が嫌だってわけじゃ無いけど、将来を考える自由くらい欲しいよね…。)


騒がしい蝉の鳴き声が暑さに拍車をかける。

すでに話題の変わった仲間たちの会話に適当に相槌を打ちながら、ほとけはベトつく不快な汗を手の甲で拭った。


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