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#大人ロマンス
#サレ妻
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再び戻ってきた自宅マンション
しかし、そこはもはや以前の場所ではなかった。
窓には防犯用の強化フィルムが貼られ、すべての部屋に最新のカメラとマイクが設置されている。
それは、蓮が「パパを守るため」という名目で作り上げた、完璧な監視システムだった。
「パパ。お薬の時間だよ」
蓮は、5歳児とは思えない落ち着いた手つきで
健一に数種類の錠剤と水を手渡した。
あやめに付けられた火傷の跡は
赤黒いケロイドとなって健一の腕に一生消えない「奈緒への忠誠心」のように刻まれている。
「……蓮。もう、いいんだ。…配信も、ナオミのアカウントも、全部消してくれないか。……静かに暮らしたいんだ」
健一の掠れた声に、蓮は悲しそうに眉を下げた。
その表情の作り方さえ、かつての奈緒にそっくりだ。
「何言ってるの、パパ。……今さら外の世界に戻って、どうするの?世間の人たちはみんな、パパが次にどう壊れるかを楽しみに待ってるんだよ」
「……パパを守れるのは、僕だけ。僕がパパをプロデュースしてあげないと、パパはまた『悪い女』に捕まっちゃうよ」
蓮はタブレットを開き、現在の「ナオミ」のアカウントの数字を見せた。
あやめの事件を経て、アカウントはもはや一個人の枠を超え
一つの「宗教」のような狂信的なコミュニティへと成長していた。
健一は、その中心に座らされる「生ける御神体」にされてしまったのだ。
「…俺は、お前の父親なんだぞ。…どうして、こんな……」
「父親だからだよ。…パパ、奈緒おばあちゃんの動画、また新しいのが見つかったんだ」
蓮が再生した動画
それは、火災の数日前に奈緒が撮り溜めていた、未公開のメッセージだった。
『健一さん。もしあなたが生き残って、私の遺した子と一緒にいるなら…その子の瞳をよく見て』
『……その中に、私がいるはずよ。…私は死なない。あなたの愛する存在を通して、私は何度でもあなたを裁き続けるわ』
画面の中の奈緒が、レンズ越しに健一を射抜くように笑う。
健一は、蓮の瞳の中に、確かに奈緒の冷徹な光が宿っているのを見た。
「パパ。……お掃除、代わってあげようか?パパは疲れてるみたいだから、今日は僕がパパの代わりに『ママ』の投稿をしてあげる。パパの、この傷跡の写真と一緒にね」
蓮は健一の腕を掴み、傷口を優しく、けれど逃げられないほどの力でなぞった。
健一は、自分自身の息子の中に
自分を破滅させた女が「完遂」されていることを確信した。