テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「おはよう環」
環は強張った顔をしていた。どうかしたのだろうか・・・。
「どういう事?」
挨拶も無く、問い詰めてくる環。
「どうしたの?環・・・」
「ちょっと来て。こんな気分じゃ授業受けられない」
そう言って、環は私の腕を掴んで、教室から連れ出した。
生徒の波に逆らって、廊下をぐんぐん進んで行く。
途中、先輩と雅彦が話しているのが目に入った。
「宮本先輩、LINE交換して下さいよ」
「は?何でお前と交換しなきゃなんないんだよ」
そんな言い合いをしていた。
環が掴む腕が痛くなってくる。引っ張る力が強い。
突き当たりを曲がった人気のない所まで来ると、やっと環は私の腕を離してくれる。
「ねぇ、どういう事?何であのハラスメントチビと一緒に登校してくるの?しかも手まで繋いで。まるで付き合ってるみたいじゃない。頭なんか撫でられて!」
ハラスメントチビというのは、もしかしなくても先輩の事なのだろう。私は流石にムッとして言った。
「いくらなんでもそんなあだ名は酷いよ。やめて」
「そんなのどうでも良い。ねぇ、どうなの?付き合ってるの?」
環の問い詰める様な言い方に、私は苛立ちを感じた。突然何なのだろう。何故こんな仕打ちを受けなければならないのか。
だから私は、強く言い返してしまった。
「付き合ってるよ。だから何?」
私の言葉と強い言い方に、環は目を丸くした。
「どうして?何であんな奴と」
「あんな奴なんて言わないで。礼央先輩は素敵な人よ」
「下の名前なんかで呼んで、止めてよ!ちっとも素敵じゃ無い!」
「何も知らないのに、勝手なこと言わないで!」
ヒートアップして、私は環の上着の襟元を掴んでしまった。環の顔が近付く。すると、怒りに溢れていた環の表情が、突然悲しみの顔に変わる。
「何でよ。何で、あんな急に出て来た奴に・・・」
環の目から涙が流れた。透明な一筋が、頬を伝って私の手に落ちた。
「環、何で泣いてるの?」
私は、環の涙を見て、自分が悪い事をしている気分に襲われた。襟元を掴んでいた手の力を緩める。
環の目からは、止め処なく涙が零れ落ちる。その量は増える一方で、環が泣き過ぎて乾涸びてしまうのでは無いかと心配に成る程だ。
「泣かないで、環。ゴメン、大きな声で言い過ぎた。服まで掴んで・・・」
私は、手を離してポケットからハンカチを取り出した。そのハンカチを環の頬に当てて涙を拭き取る。
すると、環の顔は赤くなって、瞼をぎゅっと閉じて、ますます涙が増える。
「なんか、ゴメン・・・」
私はそう言って、片腕を環の肩に回して、頭を抱き込む様にして涙を拭こうとした。
ビクッとなる環。私も釣られてビクッとなってしまった。
「環・・・?」
環の顔を覗き込むと、閉じられた目が開いて、私の目を見てきた。ずっとスカートの横で強く握られていた手が緩まり開かれ、上に登って私の両頬を包む。環の手は暖かかった。
環の顔が、私の顔に近付く。
え?と思った時だった。
環の唇と、私の唇が、重なった。
頭の中が、真っ白になった。
時間が止まってしまった様に、私も環も動かなかった。唇を重ねたまま、目を見開く私と、涙に濡れた目を緩く閉じている環。
どれ位時間が経ったのか分からない。チャイムの音が響いた。
ハッとなり、離れる私と環。
私は何も言えなかった。言葉が出てこなかった。そのまま環を見つめ続ける。
環は、俯いて、私から目を逸らして、そのまま走って行ってしまった。
すれ違い様に「ゴメン」と呟きを残して。
私は、何だか分からないけど、気が付いたら自分の席で授業を受けていた。
教室に環の姿は無い。どこに行ってしまったのか・・・。
休み時間になると、私はスマホを開いて環にLINEを送った。だが、環の先にある鞄の中からバイブの音が聞こえて来た。環にメッセージは届かない。
どこにいるんだろう。探さなきゃ。
そう思って、教室の周りから探し始めた。
短い休み時間が終わると授業に戻り、また次の休み時間に探しに行く。それを繰り返して、とうとう昼休みになった。
短い休み時間では探さなかった場所を探す。特別教室、体育館、そして、屋上。
居た。環は屋上の真ん中で、体育座りをして、小さくなって眠っていた。
「環・・・」
私は、静かに環を呼んだ。
柘榴とAI

23
648
ruruha
132
#異世界
金山ジョージ
13,188
ゆっくり顔を上げる環。
「透子・・・」
私の名前を呼ぶ環。
「ん?」
私は、首を傾げてそう聞いた。
「透子、私、透子の事が好き」
また泣きそうな顔で、環がそう言った。
「・・・うん」
私は、頷いた。
「さっきの、やきもち。みっともなくてゴメン。酷い事言って、ゴメン」
「・・・うん」
「中学の時から、ずっと好き。透子の事だけ、ずっと見てた」
「・・・環、ありがとう。好きになってくれて」
私は、環の横にしゃがんで、環の肩におでこを乗せた。甘えるみたいに。
「環、私、礼央先輩が好きなの」
「・・・うん」
「環の事、大好きだけど、友達としてなの」
「・・・知ってる」
「環、私・・・どうしたら良い?」
気持ちに応えられない事が、申し訳なくて、それでもいつも通りに環に甘えて、聞いてしまった。
何なんだろう、私。何してるんだろう。
「透子は、普通にしてて」
環はそう言った。
「普通?」
「うん。今迄通りに、透子のしたい様にしていて。私、透子に笑っていて欲しい」
「・・・分かった。でも、礼央先輩と付き合うのは、許してくれる?」
「・・・嫌だなぁ・・・」
・・・ダメなのかなぁ・・・。
どちらかしか、選べないのかな・・・。
そう思った時、環が小さな声で言った。
「でも、良いよ。嫌だけど、許す」
「ありがとう、環」
「うん」
「好きになってくれてありがとう」
「うん。自分でもどうにも出来ない。多分これからもずっと好き」
「・・・ずっと、友達で良いの?」
「・・・良くないけど、でも、友達でもなんでも無くなる方が嫌だから」
「分かった。これからもよろしくね・・・」
「うん」
それから、昼休みの間中、ずっと2人でそのままの姿勢で、2人で過ごした。
コメント
2件

展開が素敵で読んでいてとてもわっくわくします!! (*˘︶˘*).。*♡感嘆の声が心の中から出しっぱなしでした!