テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#離婚
#ヒトコワ
長谷川幹事長の逮捕
そのニュースは日本中を駆け巡ったが、私は勝利の余韻に浸る暇もなかった。
長谷川を背後で操っていた巨大な利権団体───
「黎明会」が、証拠隠滅のためにルーツ・ガーデンを物理的に消し去ろうと動き出したのだ。
「詩織さん、奴ら本気だ。警備を突破してくる。……でも、その前にこれを見てくれ」
海斗が、直樹の遺品である古いノートの裏表紙から見つけ出した、16桁の暗号キー。
それを解析して現れたのは、隠し口座の残高でも、誰かの弱みでもなかった。
それは、10年前のあの日……
直樹が私と結婚した日から、彼が逮捕される直前まで
毎日欠かさず記録されていた「もう一つの家計簿」だった。
『○月○日:詩織が笑った回数 3回。……貸し1。』
『○月○日:詩織が作った味噌汁の塩分濃度 0.8%』
そこには、私を支配するために使っていた「数字」を
彼なりの不器用で歪んだ「愛情の観測記録」として書き換えていた形跡があった。
私は、父の万年筆を握りしめたまま、その数字の羅列を見つめた。
彼は私を壊すことでしか、私を自分の帳簿に繋ぎ止めておけなかったのだ。
「詩織さん、黎明会の連中が来る」
「ええ、分かっているわ。……海斗君、陽太。みんなを連れて、『大移動』を始めるわよ」
私はルーツ・ガーデンの全資産を
あらかじめ用意していた「クラウド型分散ネットワーク」へと一瞬で移行させた。
物理的な土地や建物はただの「箱」に過ぎない。
私たちの本質である「絆とデータ」を、黎明会の手の届かない場所へ……
世界中の支援者のサーバーへと分散したのだ。
「箱はあげるわ。でも、私たちの『価値』は一円たりとも渡さない」
【残り13日】