テラーノベル
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黎明会の実行部隊がルーツ・ガーデンの重い扉を蹴破ったとき
そこにいたのは、自動で稼働する数台の掃除ロボットと、壁に投影された巨大な0の数字だけだった。
土地も、建物も、サーバーの本体も。
私はすべてを法的に「一円」で地域コミュニティに譲渡し
実質的な運営機能は世界中の支援者のデバイスへと分散されていた。
「……消えただと? 数十億の資産が、一晩で消えるはずがない!」
リーダーの男が吠える。
しかし、彼らが手に入れたのは、莫大なコストだけがかかる、空っぽの「負債の箱」に過ぎない。
◆◇◆◇
その頃──…
私たちは父の知人が所有する静かな山あいのキャンプ場にいた。
移動式のオフィスと、ネットさえあればどこでも繋がれる新しい「ルーツ・ガーデン」の形。
海斗は焚き火のそばで、直樹の「愛の観測記録」が収められた端末を見つめていた。
「……詩織さん。俺、この名前にケリをつけるわ。直樹の息子としてではなく、あんたの『一円』を管理する一人のエンジニアとして」
海斗は、直樹から受け継いだ唯一の資産である「海斗」という名前の戸籍を法的に分断する準備を始めていた。
彼は直樹を憎むことさえも「時間の無駄」だと判断したのだ。
一方で、陽太は直樹のノートを握りしめ、そのノートを焚き火の中に投げ入れた。
炎に包まれる直樹の呪縛。
灰になって消えていく、10年間の歪んだ支配。
私は、父の万年筆を胸に二人の姿を静かに見守った。
直樹が一生をかけて数え、支配しようとした私の人生。
今、あなたの息子たちが、それを「自由」という名の真っ白な帳簿に書き換えてくれた。
黎明会が空っぽの箱を抱えて立ち往生している間に
私たちは新しい日の出へと歩き出す。
【残り12日】
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