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気づいたら知らない場所に居た。
金魚もいつの間にか消えている。
『これ以上進んだら本当に迷子になってしまう』
そう思った私は、来た道を戻ろうと
後ろを振り返り足を踏み出した。
その瞬間、景色が一変する。
青々とした木々たち。
緑色ではなく本当に青色なのだ。
そして季節は冬のようだった。
木の枝が凍ってキラキラと光っている。
なんだか綺麗だな…
そう思ってそれに手を伸ばす。
が、
「触るな」
と冷たく低い声が私の耳に響く。
声がした方を見ると袴姿の男の人が
こちらに向かってきていた。
「誰…?」
「それはこっちのセリフだ」
「小娘どこからやってきた?」
小娘?
人のことを小娘呼ばわりって酷いなこの人…
「勝手に人の敷地に入るなんて…」
案外近くに来ると身長が高くて威圧感が増す。
「金魚を追いかけたらここに…」
震え声で説明をすると
「ふん」
「なら小娘は余の手伝いをしろ」
「物によっては報酬をやる」
報酬…
「小娘、名はなんと言う?」
「冬藍 叶向です…」
「かなた…?男らしい名前なんだな」
「あの!!報酬って物じゃなくてもいいんですか、?」
それならこの願いもワンチャン
叶えてくれるのかもしれない。
そう思いながら尋ねる。
「当たり前だ」
「ただし、それ相応のことをしてもらわんとな」
不気味そうに笑いながらそう言った。
「あの…あなたの名前って…」
「余は青の地の帝王、寒珋だ」
「かる….」
「なんだ?文句でもあるのか?」
「い、いえ!!無いです!!」
やっぱりここって現実じゃないのかな…
この風景といい、こんな和風の人…
見たことないし。
「小娘、それやめろ」
「はい?」
「敬語なんて使うな」
「ぇ..でも…」
「余がいいと言ってるだろ」
「分かり───」
「…分かった」
なんかこの人身勝手だな…
そんなことを考えながら口を尖らせる私。