コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
心地よい風が吹き、様々な色に染まった花弁が風に乗り流れる。
テーブルの上には卵がたっぷり挟まった、卵サンドとフルーツサンド、ポークジンジャーサンドがのっていて、とても美味しそうだ。
大好きな薔薇に囲まれ、美味しそうなサンドイッチがあり、最高の景色、心地よい気温、香り。
お茶をするには環境が完璧に整えられている…………はずだった。
「アーロン様!飲み物は何に致しますか?♡」
「………コーヒーで」
「はあい♡」
何なんだこの状況は…………
遡(さかのぼ)ること数分前___
お爺さんがサンドイッチを作っている間、
僕にも何か出来る事はないかと聞いた所、
猫の餌やりをお願いされたので、
渡された餌を持って、猫の元へ向かった。
名前はローズだと聞いている。
言われた場所へ行くと、種類はバニリーズだろうか、白と黒の美しい毛並みで座って
……こちらを警戒している。
まあ初対面なので仕方ないだろう。
僕は片膝をついてローズへ手を差し伸べる。
まずは僕の匂いに慣れてもらわないといけないと聞いたことがある。
手を出すと、最初は動かなかったが、少しずつ警戒はしつつも近づいて、匂いを嗅いで舐めてくれた。
順調に警戒をといてもらえてるようでホッとした。
時々顔や頭を撫でると気持ち良さそうにミャーと鳴いている。可愛らしい。
もう少し動物に懐かれる体質になりたかったな。
しばらくそうしていると向こうから擦り寄ってくれるようになった。
可愛い……もう片方の左手を出して体を撫でる。
右手で猫の顎(あご)の下を優しく掻(か)く。
犬とか猫の動物は匂いに慣れさせて、顎を掻いてやれば大体は懐いてくれる……はず。
しばらくローズと戯(たわむ)れて、ご飯をあげた。
よく食べて大きくなるんだぞ。
「………可愛い」
ローズを見てそう呟いて眺めているとふと、視線を感じた。
「?」
殺意はないが気になったので気配のする方へ振り返ると、そこにはストロベリーブロンドの髪に、はちみつ色の大きな瞳をした可愛らしい少女が居た。
その可愛いらしい顔には驚いたような表情が現れていた。
「……どうかしましたか?」
「ビクッ) ッ!」
声をかけると、少女は少し肩を揺らして話す。
「そ、その猫…どうして、仲良くなれて……」
「ローズのことですか?警戒心を解いてもらっただけですよ」
「そ、その猫は私達……ローディスト伯爵家一族にしか心を開かない猫と言われているんですよ!?貴方一体何者なの……?」
「……そうなのですか?」
少女は信じられないものを見る目でこちらを見る。
僕自身も今のを聞いてかなり驚いた。
まさか、特定の一族にしか心を開かない猫だなんて……
なら、何故あのお爺さんは僕に餌やりをお願いしたのだろうか。
「私(わたくし)、ローディスト伯爵家長女
メリア・ローディストと申します。
あの貴方、お名前は?」
「え?ああ……」
どうしようか、お忍びで来ているがここは名乗った方が良いだろう。
「初めましてお嬢さん、僕はアビュラル公爵家長男、リース・アビュラルと申し上げます。今回はお忍びで来ているのでこの姿ではアーロンとお呼びください」
「こ、公爵家!?た、大変失礼いたしました。アビュラル様と知らずに無礼をはたらいたこと、深くお詫び申し上げます」
「いえ、お気になさらず、
お忍びなので仕方ないですし…この姿ではアーロンと呼んでもらえると有難いな。
敬語も要らないから気軽に話してくれていいよ」
「え、……えっと…じゃあアーロン、様…?」
「メリアさん…?」
メリア嬢と悩んでさん付けの方を口にするとポンッと顔を赤らめた。
どうしたのだろうか?急に風邪でも引いたのが?
「大丈夫?顔が赤いよ?」
心配して彼女の顔を覗き込むと、体温が上がってきてるからなのか、真っ赤に茹で上がっている。心配だ。
そして僕は水魔法の【霧生成・ミスト】を使って透明な霧で彼女の顔を冷やす。
極薄の膜で作って、風のように顔にあてると、水滴とか付かないのでずぶ濡れにはならないだろう。
「水魔法で顔の熱は下げたけどしんどいようなら休んでね?」
そう言って微笑むと、「ひ、ひゃい……」
と、返すのでやっとという風な返事がかえってくる。
ちゃんとした返事が出来ない程フラついてるのだろうか。無理はしないで欲しい。