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今日はハロウィンだし、ずっと気になっていた、娘が4歳くらいの時にあった出来事を話そうと思う。


ある日の心霊体験で、私は私で全く別の劣化した教会のシスターみたいな奴に呼ばれていて、幽体離脱で対応していた。


翌朝隣で飛び起きた娘が、周りをキョロキョロして「怖い夢を見た」と言う。


その夢では廃墟みたいな風景の中にある教会があり、そこに沢山の小さな小動物が居たそう。


みんな大きなニンゲンを怖がっていて、そのニンゲンというのが、私が対処していたシスターと外見が酷似していた。


小動物達の中に、ひときわ小さくて真っ白な子猫が居た。娘は何となくニンゲンに喰われる気がしたらしく、子猫を抱き抱えて教会から脱出した。そこまでが、夢の内容として記憶していたようだった。


ただ興味深いことに、話している娘の頭の後ろから急にポンッと白い塊(ケセランパサランみたいな形に見えた)が飛び出して、コロコロと転がりながら寝室の窓際で止まった。


それを見た娘が「あ!猫ちゃん!あれ!」と指を差した。


娘が視えていることにも驚いたが、猫と認識していることにも更に驚いた。


よく見れば確かに猫みたいな小さく尖った耳はある。でも、顔だけだった。鼻はなく、口だけが耳まで裂けている。目も、猫っぽくはない。見るからに妖怪の類だった。


それを「可愛い~!」と言いながら撫でる娘。触れているのかは定かではなかったが、敵意はないようで、とりあえずしばらく放置することにした。


これはどうするべきかと今の夫に相談したところ、霊視をした彼は「迷子だね」と言った。


教会にいた見るからにホラーな外見のシスターが悪い奴で、小動物や子供の魂を攫っていくタイプだったようだ。


その猫モドキも、親から離れた隙に誘拐されて閉じ込められたところを、波長の合った娘に抱えられて脱出したという。


もちろん後日シスターが追いかけてきて、邪魔をした私に対して激怒していたが、夫側の守護に喰われて内情を書くまでもなくあっさりと撃退されていた。


危険が去った猫モドキだが、娘が可愛がられているのを見て「いいなぁ」とでも思ったのか、娘に憑依して身の隠れするようになった。


明らかに娘より幼い舌っ足らずな声音で、憑依していると一目瞭然だった。


改めて「名前は?」と聞けば、舌っ足らずな口調で「ミチュ」と答えた。


夫は「正しくは多分ミツだね」と言い、以後しばらくはミツという名前で呼んでいた。


特に娘が消耗するような憑依の仕方はしていないこと、それからめちゃくちゃ弱い個体だということでしばらく放置していたが、ある時ふと夫が「そろそろミツのお母さんが到着すると思う」と言った。


僅か3日後、そのお母さんとやらが家の前まで到着したのだが、その外見はまるでポケモンのトリ○ドン。しかも山ひとつ分ほどの巨大な大きさ。猫っぽいケセランパサランのようなミツとは全くもって別の外見だった。


「これ本当に母親?大丈夫?別物じゃない?」

と恐る恐る問えば、夫は「本物だよ。子供は容姿が違うってこと、結構あるし」とあっけらかんとして頷いていた。


約1ヶ月の滞在の後、ミツは名残惜しそうに親元に帰って行った。


どうやらかなり遠いところから移動している最中にはぐれたようで、言葉は分からないが「どうも」というような雰囲気だけを残して、ミツを連れて去っていった。


こちらとしての体験はここで終わり、後日談としては義家族と遠出する際、山道を通った時に移動中のミツの母親とその仲間の群れを見かけたが、それ以降は今のところ音沙汰がない。


ふとここで疑問が生まれる。


私達の目線ではこの話はここで終わるが、妖怪や幽霊の立場からすると、母親や群れとの移動中にはぐれてしまい、よく分からない悪い奴に捉えられて閉じ込められている物語が生まれるわけだが、彼ら的にはどう思っているのだろう。


人間のちびっ子に助けられ、その後その人間に憑き、食にも住処にも困らない環境で保護され、無事に親元に返されたのは、ミツにとっては大きな冒険だったのだろうか?


大体の心霊体験は私目線で書いているが、ふと思う。妖怪や幽霊にも感情や思考はあるのだから、きっと各々に思ってることも違うはず。


ミツからするとかなりの大冒険になったのではないかな、なんて思ったりする。


夫に「ミツ、もう会うことないよね?」と聞けば、ひとしきり考えた後「うーん、多分娘ちゃんが高校卒業する頃には合流すると思うよ。俺達側じゃなくて、娘ちゃんの守護には加わる可能性が十分にある」と言うから驚いた。


「あれはまだ幼体だから弱いけど、成体だと結構強い。山ひとつ分の大きさはあったでしょ?大きいほど力も強い個体なら、成体になる頃には十分な戦力だし、何より面白い体験をしたから娘ちゃんを忘れることはないと思う」


ただ、人の容姿か物の怪の容姿かはその時になってみないと分からないという。


「あの種族は多分、成体になるまでの速度がえらく早いけど、成体になってからは万年生きるタイプだと思うから、娘ちゃんが高校生くらいで向こうは成体かなって」


夫の霊視は色んな情報をパッと抜き取れるようで、視た感じそんな印象だったらしい。


果たして娘の守護に加わった時、娘はミツのことを覚えているのだろうか?


物の怪と人間の記憶力はかなり差がある。物の怪は非常に長い年月を存在するため、おそらく非日常な体験をすると万年覚えているのだろう。


一方の娘は既に『白い猫』の存在を忘れつつあるようだから、先が思いやられる。


いつかまた合流した時は、ミツ視点ではどういう印象だったのか、聞いてみようと思う。


私が死に呼ばれるまで。

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