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【rbr視点】
筆箱を教室に忘れたと急いで取りに戻ったコネシマは何やらニヤニヤしながら生徒会室に入ってきた。
「おぉ!みんな!とってきたで〜♪」
コネシマがバンッと扉を勢いよく開ける。
鼻歌まで歌っており、口角が上がっている。
「お、なんやシッマ良い事でもあったんか?」
最もコネシマと仲がいい鬱先生が鼻で笑いながら聞いた。
「そやねんそやねん!これ、好きな人からのチョコやねんけどな!」
コネシマはその言葉を待ってましたと言わんばかりにぱあっと明るい顔になっていきいきと話し出す。
筆箱と一緒に持ってたのは小さいハート型のチョコレートだった。
「その好きな人って…あの森透さんか…?」
ゾムが小難しい顔でコネシマに聞く。
コネシマは「そうや!」と明るげに答えた。
それを聞いたほとんどの皆は強ばった表情をする。中にも手を止めるやつもいた。
皆は黙り込んでしまい、不潔な空気が漂(タダヨ)う。
コネシマはそんな空気の中、気にせず明るくいきいきと話を続ける。
どうやら「貰った」というよりも「奪った」らしい。
彼女は教室に1人でそのチョコレートをじっと見つめていた。
コネシマは一旦声をかけてその彼女からチョコレートを奪っていった、とのこと。
その話を聞いたほとんどの人は強ばっていた表情が少し和らげており、ホッと息をついていた。
「彼女の意思から貰ったって訳ではないんやな?」
俺は作業を続けながらコネシマに聞く。
「まぁそやなぁ…」
コネシマはがっくりと悲しそうに返事をする。
「シッマそんな落ち込まんでもええやん、貰ってるチョコは多いねんから」
鬱はコネシマに励ましの声をかけた。
少し感情がこもっていないような気がしたが。
「俺はたくさん貰うよりも森透さんから貰うチョコが1つでも嬉しいんや…」
コネシマはしょぼんと口をとんがらせて下を向く。
コネシマは入学式の頃からずっと好きな人がいるらしい。
その子は同じクラスで初めてのお友達で、「森透 月雫(モリトウ ルナ)」という女の子だ。
コネシマはその子の事をずっと前から話していた。
生徒会の皆は「森透 月雫(モリトウ ルナ)」の事は知っている。
コネシマの話から知った者も、実際に会って元々知っている者もいた。
「あ、今日その森透さんとやらに渡さなあかん資料があるんやった」
トントンは軽く手のひらを打って言った後、
資料が入っている引き出しの中を漁る。
「あったあった…」
そう言うと2枚3枚の紙を出して俺らの方に振り返った。
「これ、ついでに森透さんに渡してきてくれん?ちょうど話せるチャンスやし」
トントンはそう言いながらひらひらと片手に持ってコネシマに向かって話す。
それを聞いたコネシマは、ぱあっと明るい表情を浮かべ、首を大きく上下に振っていた。
「ほい、これ」
「おう!ありがとな!」
トントンはその資料を子供のようにはしゃいでいるコネシマの手に渡す。
それを聞いている俺の胸の中には何かモヤモヤとした異物があった。
なんやねんこの気持ちは…
俺はその中途半端なモヤモヤとした感情が鬱陶しく感じた。
何となく俺も分かっている。
コネシマと森透さんが仲良くするのが気に食わないこと。
森透さんが他の男性と仲良くする事が不快に感じている事。
俺は_
森透さんに恋をしていること_
─〇〇視点─
「ほんとあいつ酷いよね〜!」
わいわいといろんな生徒の声で賑わっている中、亜美がペラペラと愚痴を言う。
「だってドーナツ10個ちょうだいって言っても2つしか貰えなかったんだよ!?」
「それは亜美が悪いね」
「え〜!そんな〜!?」
そんなのびのびと会話をしていた瞬間、賑わっていた教室が急にシーンと静かになった。
なぜならいつも休み時間には教室にいない彼(コネシマ)がドアの前に立っていたからだ。
彼は休み時間になったらいつまどこかへ行く。
多分だが、生徒会室に行っているのだろう。
同じ生徒会員達と仲が良く、いつも生徒会室に集まって楽しく話しているだとか。
すると7、8人ぐらいの女子生徒が彼の周りに集まって彼に声を掛けていた。
「捏島くん今日は教室で過ごすのぉ?♡」
女子生徒達はぐいぐいと彼に話しかけている。
彼は早くも1年生で生徒会に入っており、おまけにイケメン、運動神経は高い方だ。
そのためこのように女子生徒からモテモテ、「元気なイケメンチワワ」とよく言われており、とても人気者。
すると彼は女子生徒達の声を無視して、息をゆっくりと吸い、口を開いた。
「森透さぁぁぁぁん!!」
その途端、小さな教室の中、彼の凄まじい大きな声が部屋中に響き渡った。
私は彼の元気な声で名前を呼ばれ、少しビクッと肩が跳ねてしまう。
中には耳を塞ぐ者、気絶してしまっている者が数人いた。
「お前もうちょっと声量静めろや!」
すると彼の背中からひょこっともう1人の男性が顔を出した。
その男性は桃色の瞳に、さらさらとした整っている黒髪。
頭の横には「天」と書かれた薄い紙が飾ってあった。
その捏島くんに桃色の瞳をした背の低い男性は呆れた顔で注意している。
捏島は「緊張しすぎて…」と照れくさそうにポリポリ頭をかいている。
(変わってる髪飾りだなぁ…)
私は桃色の瞳をした男性の頭にある、あまり見ない髪飾りのようなものに珍しく思い、無意識のうちにまじまじと見つめていた。
するとたまたまその綺麗な桃色の瞳とばっちり目が合う。
彼はすぐさま目を逸らし、耳まで顔を赤く染めていた。
(恥ずかしかったのかな笑)
私はそんな彼の様子に微笑ましく思っていた。
(そんなことより私も新しく恋したいなぁ…)
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