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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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さて、即売会当日はなかなか忙しい。俺は早起きして、咲さんの車に拾ってもらって、まず咲さんちに向かった。
道中で、改めて今日の予定を確認した。
「咲さんちでメイクと女装して、車で途中でおっくんを拾って、サークル入場して、届いてる本入りの段ボールを席まで持ってって、を開始までにやらないといけないんですよね?」
「そうです、今回始めての壁なので、本も多いんですよ。奥さんとも連絡とって、その辺運ぶのも手伝ってもらえるって」
壁、というのは買いに来る人が多いサークルに与えられる席と聞いていた。おっくんの連絡先は、こないだ咲さんに会った時に教えている。
「じゃ、なんとかなりそうですね」
「なんとかやります。小銭もお札もたっぷり用意してあるし」
「そうか、お金の勘定も絶対間違わないようにしないと」
咲さんちでメイクし、俺はまたロングヘアウイッグと藤色のロングワンピースを身にまとった。うわー、今回は服脱いで直に着たから、股がスースーするよー!
それからおっくんを拾いに行く。川崎駅で待っててもらったのだが、車を止めて、所在無さげに立っているおっくんに「おーい」と声をかけたら「あ、ゆっちゃ……ゆっちゃん!?」と瞠目された。
おっくんは車に駆け寄ってきた。
「え、え、マジでゆっちゃん!?」
「マジで俺です。こちらがメイキャッパーで女装指南の狭山咲さん」
俺は手で運転席の咲さんを示した。
「おはようございます、狭山咲です。兄がいつもお世話になっております」
咲さんは明るく微笑んだ。
「お、おはようございます……今日はよろしくお願いします」
「お願いするのはこちらですよ! すごく助かってます!」
「ど、どうも……あ、今ジャケット着てますけど、下タンクトップなんで、会場では脱ぎますね。ほら」
おっくんはジャケットを少し脱ぎ、もりもりの僧帽筋を露出させた。
「わー! 頼もしい!」
咲さんは、心底嬉しそうだった。
で、車を飛ばして大田区産業プラザへ。咲さんに聞きながら、俺とおっくんは段ボールの山を運搬し、咲さんはテーブルの上を物売り用に整えた。
で、俺が気になっているのは、イベント開始前なのに明らかにテーブル前に列ができ始めていることだが。
咲さんが、「ええー……」とうめいた。
「サークル入場組だけですでに列できるレベル……?」
「えっと、列整理っていうの必要なんでしたっけ?」
「和泉さんお願いできませんか、奥さんにはガード的な意味で近くにいてほしいんで」
おっくんは、それを聞いてビシッとした。
「は、はい!」
「ここに列作るべきとかあります?」
「他のサークルの迷惑にならなければ何でも。あ、最後尾札作りますんで、それも使ってください」
咲さんは適当な段ボールを割いて「最後尾」とでっかく書き、俺にくれた。俺は最後尾札を手に「列こちら! 最後尾の人はこの札持ってください!」と列周りで騒いで列を整えた。女装コスが多い列の人たちは、お行儀よく言う事を聞いてくれて、俺はホッとしたのだが。
「これ、イベント始まったら、もっとすごいことになりません?」
咲さんは「なります……」とまたうめいた。
「見通しが甘かったです……売り子二人じゃすまないし、そこに加えて列整理もほしいし……」
というと、咲さんとおっくんと俺で売り子やったとしてももう一人列整理に必要なのか。うわー、どうしよう……。
しかし、いきなり無から人を出せるわけもない。俺が臨機応変に売り子と列整理を引き受けて、なんとかやることにした。
イベント開始のアナウンスが響く。それが販売開始の合図でもある。
最初の一人が「新刊全部ください!」と言ったのを皮切りに、会場にもっと人が入ってきた。人の流れがこちらのサークルに向かってくる。
「い、和泉さん、列整理お願いします!」
「はい!」
俺は、他のサークルへの人の流れを遮らないように、列を折りたたんでもらうのに奔走した。でも売り子の方の売るのが、明らかに人が並ぶのより遅く、列は長くなるばかりだ。くそー、人手が欲しい!
人混みでてんやわんやのなか、俺は視界の端に見覚えのある背格好の人を見た気がして、ふとそちらを見た。
おっくんに負けず劣らずの背丈、おっくんに負けず劣らずの筋骨たくましさ。ヤーさん扱いされるくらいの人相の悪さ。
え、あれは。
その人もこっちを見て、驚いた顔をした。
「え、千歳!?」
『い、和泉!?』
コメント
1件
いやあ、もうめちゃくちゃ楽しかったです! 即売会のバタバタ感がすごくリアルで、自分も並んでる気分になりました(笑)。おっくんの僧帽筋アピールに咲さんが「わー!頼もしい!」ってなるの、好きすぎます。最後にまさかの千歳さん登場で「ええっ!?」って声出ました! 続きが気になりすぎます…!