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「護衛任務:セツナ脱出」
真っ赤な警報音が鳴り響く中、
セツナたちのいる第零区域の格納庫全体が自動封鎖に入った。
壁から降りてきた装甲シャッター。
そして、奥から現れたのは、かつてこの場所で使われていた**“無人戦術兵器”**だった。
⸻
「実験兵士の動作パターンをコピーしたやつだ……!
皮肉なもんだな。生き延びた本物の前に立つなんて」
ショッピが苦笑しながら端末を抱え、データ遮断処理を始める。
「俺は記録を守る、時間稼げ!」
⸻
鬱先生がセツナに拳銃を手渡す。
「逃げ道は右の通路を抜けた先。
上へ続く搬送用リフトがある。お前はそれで出ろ。
いいな、絶対に“ここで終わるな”」
セツナは一瞬だけ戸惑ったが、目を強く閉じて頷いた。
「先生は? ショッピは?」
「俺らは記録に残らなくていい。
けど、お前は“証明のために残らなきゃいけない存在”だ」
⸻
無人兵器が放つ銃火が飛ぶ。
鬱先生が前に出て、撃ち落とす。
「セツナ、行け!!!」
⸻
セツナは走った。
過去の自分を置き去りにするように。
誰かの選択で生かされた命ではなく、自分自身の足で選ぶために。
その手には、先生から渡された拳銃。
そして胸には、ファイルと記録データが詰まっていた。
⸻
搬送リフトの扉が開き、セツナが乗り込む。
だが、上昇の直前——
扉の隙間から飛び込んできたのは、負傷した鬱先生だった。
「……ふざけんな、勝手に残ろうとしてんじゃねえよ」
「っ……先生!!」
息を切らせながらも、鬱は笑った。
「これくらいで、俺が死ぬわけないだろ。
お前が生き残るって決めたなら、俺も生きるって決めたわ」
⸻
リフトが動き出す。
上昇する中、セツナは下に残った暗闇を見つめていた。
「ショッピは……」
「大丈夫だ。あいつは、“絶対に消えないデータ”を残すのが仕事だからな」
⸻
地上に出たとき、空はもう白んでいた。
それは、黒瀬セツナという兵士が
本当の意味で“生まれた”夜だった。