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第11話「幹部会議:未来を問う者」
その日、本部最上階の作戦室に、幹部全員が招集された。
総統・グルッペン。
補佐・トントン。
諜報・ショッピ(負傷中、通信参加)。
情報保全・鬱先生。
戦闘部隊指揮官・ゾム、シャオロン、コネシマ。
通信担当・ロボロ。
議題はひとつ。
「黒瀬セツナの存在と、その今後について」
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トントンが、机上に一枚の資料を広げた。
「この子が生き残ったことで、今まで封じてきた“実験兵士計画”の記録が、軍上層部にまで流れ始めてる」
グルッペンが無表情のまま言う。
「……封じてきたものが動き出した。
では問おう。この少年は“国にとって危険”か?」
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最初に沈黙を破ったのは、ゾムだった。
「……俺は、“仲間を守ろうとした”あいつを見てる。
訓練場で自分の怪我も放っといて、他の兵をかばってた。
俺の部隊に入れても、恥じねぇと思ってる」
シャオロンがうなずく。
「強いだけじゃなく、自分で選べるやつだ。
“命令だけに従う駒”とは、明らかに違う」
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ロボロは静かに言った。
「通信記録にも出てこない場所から、彼が持ち帰った音声と映像データ。
どれも改ざんの跡がなかった。つまり、“真実”だった」
コネシマが低くつぶやく。
「……なら、“真実を抱えて生きる子供”に、俺ら大人がどう向き合うかって話やな」
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しばしの沈黙ののち、トントンがまとめる。
「黒瀬セツナは、“記録されなかった罪の生き証人”だ。
このまま一般兵に戻せば、再び何かに飲まれる。
それを拒むなら、“立場”を与えるしかない」
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グルッペンは席を立ち、最後にこう言った。
「……なら、国家は彼に“問いを返す側”としての地位を与えよう。
幹部候補・特別監査官——黒瀬セツナ。」
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その日、会議室にいた全員が、
もうあの少年を“ただの兵士”とは思っていなかった。