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静寂の中、エカテリーナの泣き声だけが響いていた。
私の身体はもう限界を迎えようとしている。
エカテリーナの手が離れまいとするようにしっかりと握られている。
「あんたが死ぬなら…っ、私だって、こんな命捨てる…っ、盾なんかならなくていい……!!」
エカテリーナは再び涙を流したかと思うと、私の体を自分から剥がし、私を横においやる。
「……っ?エカ、テリーナ……?」
「あんたが死ぬなら私だって、生きていたくない……死ぬときも、一緒がいい……っ」
彼女は涙を拭いながら言った。
「アルベルト……守ってくれたのに悪いけど……っ、もう、戦えるほどの魔力も残ってないのよ…私……っ」
私の手のひらに彼女は弱々しく自分の手を重ねてきた。
顔だけで彼女の方を向けば、彼女もまた私の方に横向きになって体を向けている。
視界がじわりと滲み、制御を失った雫が頬を伝う。
それは顎へ逃げることも許されず
不快なほど生暖かい温度を保ったまま、音もなく耳の奥へと吸い込まれていった。
「…一緒に……ですか」
それは私にとって甘美な提案だった。
孤独に逝くよりも、彼女と最期の一瞬を共有する方がどれだけ幸福だろう。
エカテリーナの瞳も潤み、溢れる涙が静かに頬を伝っていた。
しかしそれは決して悲しみだけを映してはいなかった。
むしろ彼女の涙は、自分自身への怒りと無力感に湛えていた。
「……アルベルト、も…わたしも…もう、ボロボロ……だし」
エカテリーナは弱々しく微笑んだ。
その声は震えながらもどこか落ち着きを取り戻していた。
「……です、ね」
私とエカテリーナは手をつなぎあって涙を流す。
「だから……あんたが最期まで私の盾として死ぬ気なら…最期まで、私をあんたの共犯者でいさせて」
彼女は冗談めかしながらも真剣な眼差しで訴えた。
私は返す言葉を失った。
代わりに力強い意思を込めて彼女の手の甲にキスを落とす。
「もちろんです………っ、貴方と一緒なら…きっと、怖くない……っ」
私たちは互いの体をそっと抱き合う。
死の影が濃厚に漂う空間の中でも、そこには確かに逝く意志と深い絆があった。
「エカテリーナ…もっと、違う形で会えていたなら……未来は、もっと、違ったのでしょうか…」
私は自分勝手にそう話してしまっていた。
そうすれば今度は彼女から同じような感情を返してくれることを期待していた。
「……そう、ね……こんな出逢いでなければ……私達……もっと違う関係だったかもね……っ」
エカテリーナはそう言って笑った。