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昨日の暖かさが嘘だったように今日は肌寒い。

嫌な暑さがどこかへ行ったかと思えばすぐに寒さがやってくる。

今日は、そういう何の変哲も無い普通の日。

少し前を歩く男子高校生の背中が見える。

私と同じ制服を身にまとい風でふわふわとなびく髪が癖になる。

私は少し早足で歩きその人物の元へ近付き横に並んだ。

「瑞稀、おはよう」

「朝から凛華かよ」

「何その言い方〜」

平川 瑞稀は高校の同級生でとても仲が良い。

バスケ部に入っている彼は人気者、という訳でもなく普通の男子高校生だ。

けれど私は知っている。

彼が本当に優しいこと、気が遣えること、案外顔がかっこいいこと。

好きだとかそういうのじゃないと思う。

というか、友達だと思っている。

ただ、尊敬はしている。

人間誰しも新しい環境というのは怖いもので私もその1人だった。

けれど、それを救ってくれたのが瑞稀だった。


暖かな春の日差しが私を照らしていたあの日、瑞稀と出会った。

同じ中学の人があまりおらず友達が出来ずに一人だけ席に取り残されてしまった私。

そこにやってきたのが瑞稀だった。

「俺、平川 瑞稀!よろしく 」

柄でもなく読書をしている私の前の席に座り私の顔を覗き込み話しかけてきた。

ただそれが私にとって有難かったし嬉しかった。

「蒼井 凛華です。よろしくね」

私はその瞬間本を閉じた。

瑞稀は入学初日なのにもうたくさんの友達がいた。

彼の周りには沢山の人がいて、彼が私に話しかけてくれたから私は今沢山の友人がいる。

それは紛れもない事実で、私は瑞稀のことを尊敬しているし感謝もしている。

瑞稀は覚えていなくても私は鮮明に思い出せる。あの日の記憶。




「りーんか!」

「瑠那!おはよう」

水野 瑠那は私の親友でいちばん最初に仲良くなった女の子だ。

人懐っこくて愛想が良いから男の子にも女の子にも好かれる。

自慢の親友。

「聞いてよ!古川くんが今度一緒に映画行こうって!」

瑠那はそう言いながら彼女の好きな人、古川 千鶴との連絡のやり取りを私の目の前に出す。

「良かったじゃん、楽しんできなよ」

「どんな服着ていこー」

「何の話してんのー?」

「瑞稀!聞いてよ、なんと古川くんとデートに行くことになりました!」

「え?!まじ!やったじゃん、頑張れよ瑠那」

そう言いながら瑞稀は嬉しそうに瑠那にエールを送っている。

そういう友達思いなところも彼のいいところだと思う。

彼を見ていると元気になるし笑顔になれる。

彼といると安心するし楽しい。

この人はすごいんだと改めて実感する。

「あ、そういえば凛華」

「ん?」

「お前原田と仲良いっけ?」

「原田って透?」

「そうそう」

原田 透は隣のクラスのイケメンで頭も良くて運動神経が抜群な完璧人間。

ただ、少し苦手意識を持っている。

あの独特な雰囲気と話し方が好きだとは思えない。

「原田くんがどうかした?」

「なんか、凛華のこと気になってるらしい」

「私?!なんで」

「さぁ?物好きなやつもいるんだな」

「うっざー、だからモテないんだよ」

「お前もな」

「2人って仲良いよね」

「「全然!」」


こんな風に普通の日常が続くと思っていた。

けれど無理だった。

そんなの最初から決まっていたことなのに。

青春の助けをするのも邪魔をするのも全部恋だから。

私たちには分かりっこない感情なはずだったのに。




「僕、ずっと前から蒼井さんのこと好きでさ仲良くなりたかったんだ」

「ありがとう」

友人と話しているはずの昼休み。

私は中庭で例の原田 透と二人きり。

事の発端は全部瑠那のせい。


「凛華!凛華!原田くんが凛華に昼会いたいって」

「え、やだ」

「そう言わずに行ってきなよ」

行ったところで話すことも無い、ましてや自分のことを意識している男と2人で会うのはどうなのか。

恋愛を全くした事の無い私には分からない。

「行っても楽しくないよ」

「原田くん、かっこいいじゃん。それに原田くんと古川くん仲良いからお願い!」

親友の恋のためならと渋々了承してしまった。

だから、こういう事になってしまう。


「蒼井さんは僕のことどう思ってる?」

「私は、特に何もかな」

「誤魔化さなくていいよ、素直に言って」

これが本音なのに何を言って欲しいのか分からない。

「ほんとに何も思ってないし、私たちあんまり話したことないんだからいきなり好きだとか言われても困るよ」

「え?俺の事好きなんじゃないの?」

「え?」

やっぱり恋愛は難しい。

話したこともないのに自分のことが好きだと勘違いする人はこの世に存在しないと思っていた。

でもそれはただの憶測と決め付けでこの世には変な類の人間もいる。

「好きじゃないです。何か勘違いさせてたならごめんなさい。」

「そっか、じゃあ振り向かせるから待っててよ」

「え、うん、?」

そう宣言して彼は校舎へ入って行った。

今日はただの寒いだけじゃない。

普通の日じゃない。

ここから私の高校生活が変化し始めたんだと思う。

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