テラーノベル
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それは、恐怖からくる震えではなく、自分を肯定してもらえた喜びと
この人への愛しさが混ざり合った、温かな感情だった。
俺は今まで、尊さんの隣に立つ「頼りになる恋人」にならなきゃいけないと、自分を追い込んできた。
部下としてだけじゃなく、対等なパートナーとして役に立ちたい。
その一心で背伸びをして、届かない自分に絶望していた。
けれど、尊さんはそんな俺の、不器用で拙い行動の一つひとつを大切に拾い集めて認めてくれていたんだ。
「それに」
尊さんが、ふっと口角を上げて付け加えた。
「大切な人間に『助けて』と言われて、それを迷惑だと思う奴なんてこの世にいないだろ?」
その問いかけは、あまりにも純粋で、俺の心の壁を易々と飛び越えてきた。
「恋は、もし俺が助けを求めたら、俺のことを情けないとか、迷惑だとか思うのか?」
「そ、そんなことあるわけないです!! 尊さんに頼られたら……俺、自分を信頼してくれてるんだって、すごく嬉しいですし、全力で応えたいって思いますもん」
「だろ?俺だって同じだ」
「尊さん、も……?」
「ああ。歳の離れたお前が、遠慮せずに本音をぶつけてくれる。それが、俺にとっては本当の意味で対等に接してもらえているようで、たまらなく嬉しいんだ」
尊さんは少し照れたように視線を逸らし、また俺を真っ直ぐに見つめた。
「俺もお前も完璧じゃない。欠けたところがある、ただの同じ人間だ。恋人なら、その足りない部分を補い合って、支え合っていければ、それだけで十分だと思わないか?」
「……!」
尊さんの言葉は、まるで真っ暗なトンネルの中に差し込んだ一筋の光のようだった。
一人で背負わなくていい。完璧になろうとしなくていい。
胸の奥に根を張っていた不安が、優しく解けていくのを感じる。
俺は、尊さんに支えられてばかりだと思っていたけど。
俺も、この人の力になれていたんだ。
そう思うと、今度こそ涙が溢れそうになった。
鼻の奥がツンとして、俺は慌てて瞬きをした。
「お、俺……全然…周りが見えてなかったのかもしれません……っ。そうです、よね……!俺も、尊さんも、同じ人間ですもんね」
「ああ」
尊さんが、満足そうに、そして心から愛おしそうに笑った。
その笑顔が、今は世界中のどんな宝石よりも輝いて見えた。
この人の隣にいていいんだと、心から思えた。
なんだかちっぽけなことで、また悩んで、尊さんに助けられた気がした。
そう思うと、なんだか恥ずかしくなって。
「…っ」
いつまでも照れくさくて、でもそれを悟られたくなくて。
俺は誤魔化すように、目の前のミルクレープをまたひとくち食べた。
今度は、甘くて、幸せな味がした。
口の中に広がる生クリームといちごの風味が、ようやく俺の心に届いた。
俺がそう伝えると、尊さんはやっぱり「単純だな」と笑ったけれど
その笑い声さえも、今は愛しくてたまらなかった。
コメント
1件
ふぁぁぁぁぁぁぁ最高すぎです( ˶ˆ꒳ˆ˵ ) ルイさんの作品見れば、ずっと笑顔ですわ!!