テラーノベル
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食事が終わり、俺たちは帰路に着いた。
先ほどまでの沈んだ気持ちはどこへやら。
夜の街を彩る街灯の明かりが、今はなんだか祝福のスポットライトのようにさえ思える。
今は尊さんの横顔を見ながら歩いているだけで、心が弾むのを感じる。
あれだけ気分が滅入ってたのが嘘みたいに、自然体でいられる自分が嬉しかった。
自分の足取りが軽くなっているのが、アスファルトを蹴る音でわかる。
俺は尊さんの横を歩く足をふと止めて、少し先を行く尊さんの顔を覗き込むようにして声を上げた。
「あの、尊さん……!」
「ん?」
尊さんが足を止め、不思議そうに振り返る。
その無造作な仕草さえ、今の俺には眩しい。
「今日、付き添ってくれたのもそうですけど、励ましてくれて、本当に……ありがとうございます……!」
俺はその場で、勢いよくペコリと頭を下げた。
夜の道端でちょっと大げさかなと思ったけど、この胸に溢れる感謝だけは、言葉と態度でどうしても伝えたくて。
尊さんは少しだけ意外そうに目を見開いた後、ふわりと柔らかく目尻を下げた。
「……ああ。お前が元気になったならいい」
その短い言葉に含まれた体温が、冷え始めた夜の空気を溶かしていくようだった。
◆◇◆◇
その日は尊さんと近くの店で晩ご飯を済ませてから別れた。
帰宅後───…
鍵を開けて足を踏み入れた部屋はいつも通り静かだったが、心の中はまだ尊さんの残り香で満たされている。
家に帰ると、俺は真っ先にリビングのソファに身を沈ませた。
座面がギシッと軋み、柔らかな感触が疲れ切った体を受け止める。
「ふぅー……」
大きく息を吐き出した途端、今日一日ずっと張り詰めていた糸がプツリと切れたように、全身の力が抜けた。
「……なんか、眠いや」
長時間の潜伏で強張っていた筋肉が、じんわりとソファに溶けていく。
このまま意識を飛ばしてしまいたい誘惑に駆られるが、いけないいけない……と自分を鼓舞して起き上がり、重い腰を上げて浴室に向かった。
熱めのシャワーを頭から浴び、一日の疲れと、あの日現場で感じた苦い記憶を一緒に洗い流していく。
身体が芯から温まるにつれ、次第に頭の中に残っていた靄も晴れていく気がした。
浴室から出て、お気に入りの部屋着に袖を通す。
着慣れたスウェットが肌に馴染む感覚が心地いい。
髪を乾かしながら鏡を見ると、そこにはいつもの
でも少しだけスッキリした顔をした自分の姿が写っている。
昨日も尊さんに救われたけど、今日は本当に、尊さんの言葉ひとつひとつに救われた気がする。
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