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顔を赤らめて下を向いてしまったから、ストレートに顔が見たかったなんて言われたことはないんだろう。
(シャイで可愛いやつだな。)
前まで感じていた劣等感は、ラファエルと話していくと消えていった。
「兄さん、もうそろそろ戻った方がよろしいんじゃないでしょうか…?」
確かに、外を見るとすっかり日が落ちていた。
「ああ、本当だ。今日はありがとう、沢山話せて楽しかったよ。」
「あ、あっ、僕もですっ兄さん。」
ニコッと微笑み、来てよかったと実感する。
(もっと仲良くなりたいな…。)
イアンはラファエルの部屋の扉を閉めると、前を向いて歩き出した。
何ヶ月もあと、雷が鳴り響いた日があった。今までで無いほど激しく雨が降り注ぎ、屋敷の屋根を打ち付けて部屋中に音を響かせていた。
夜中、寝付けが悪く、灯篭を持って廊下を歩いていた。かなり鈍い音が耳を刺激し、窓の外を見る。雨は斜めに降り、窓はガタガタと揺れていた。
(すごい雨だな……、何か、ゲームの世界であったような…。)
「兄さん……。」
いきなり、服の裾を掴まれた。反射で驚いてしまったが、直ぐにラファエルの声だと気がついた。
「ああ、ラファエルか。お前も廊下に出てるなんて、どうしたんだよ?」
ラファエルと話す時はゆっくり発音し、怖がらせないようこの数ヶ月心がけてきた。そのおかげか、ラファエルはイアンを見つけると自主的に話しかけてくるようになった。
「……。」
何も喋らない。だが、イアンは知っていた。ゲームで見たことがあるからだ。
ラファエルは母親が死に、この屋敷に養子としてやってきた。母親は元々、ラファエルに似たとても美しい人であった。そのため、父上と愛人のような関係だったが、病気を患い命を落としてしまった。
ラファエルが母親と同じ部屋にいた時、心臓の音が消えた。
ーーその日は激しい嵐であった。
イアンはラファエルの頭を優しく撫でて言った。
「…怖いよな、でも大丈夫だから。」
そしてゆっくりとしゃがみ、イアンと目を合わせた。
ラファエルの綺麗な目は、イアンをしっかりと捉えている。
「俺がいるからね。」
イアンがそう言い、ニコッと茶化すように笑うと、ラファエルは目から涙をボロボロと零した。
「……お、俺、怖いんです…。兄さん、1度だけ、お願いごとをしてもいいですか……?」
イアンは驚いた。こうしたお願いごとを頼まれるのは初めてだったからだ。だが、また笑顔を取り戻し、ラファエルの頭に手を添えた。
「いいとも。なんでも言ってごらん。」
ラファエルは少し躊躇した後、上目遣いで言った。
「…今日、一緒に寝てもいいですか?」
イアンは目を見開いた。ここまで仲良くなれたんだなんて。もちろん断る理由なんてない。より仲良くなれる機会なのだ。
「ああ、当然さ。」
2人は手を繋いで、イアンの部屋へと向かった。
「先に寝てていいよ。あとで俺もベッドに入るから。」
「……はい。」
ラファエルは少し不満があるのか、ぷくっと頬っぺを膨らました。
「……なんだよ。」
くすっと笑うと、ラファエルは問いかけた。
「兄さんは、寝ないんですか…?」
少し驚いてしまった。自分はここまでラファエルの警戒心を溶かしてしまったのだと喜んだほどだ。
「…少しやることがあったんだけど…分かったよ。」
言い訳を言おうとしたら、ラファエルが泣きそうな目で訴えてきた。そんな瞳には誰も勝てないだろう。ラファエルの隣に腰を下ろして、頭を撫でてやった。
「……へへっ。」
ラファエルは幸せそうに笑っている。しかし、イアンは少し不安になった。
(幸せなのは良いけれど、このまま行くとゲームの内容はどうなるんだろう……?)