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それからの二人はほとんど毎晩一緒だった、百合の家で夕食を食べる日もあれば、和樹が彼女を外に誘う夜もあった、一度和樹の講義に百合もまぎれこんだが、ちんぷんかんぷんで退屈だったと彼女は笑った


キャンバスでも、どこでも二人は一緒だった、そんなトロフィーガールフレンドを和樹は腕に引っ掛けさせて自慢して回った、友人達はあんなに可愛い彼女をどこで見つけたのだと羨ましがった



和樹は時々、金型業界の大物で情け容赦ないワンマン社長の父の話をよく百合に話して聞かせた、家でも権威をふりまいている父がとても苦手だと言った



「父の言う事に逆らうのはまず無理だね、みんな言いなりになっている、でないと後が怖いからね」


「お父様はずっとそんな感じなの?」


「うん・・・母が死んでからもっと近寄りがたくなったな」


「妹さんは?」


和樹がため息をついた


「歳が離れてるからね・・・あのぐらいの年の女の子に何を話せばいいか分かんないよ、今妹は中学受験で一日中父が雇った家庭教師と家政婦に囲まれて暮らしてる、寄宿舎付きの権威ある女学校に父は通わせたがっている」



そして彼は急に押し黙ってしまった、お互いに良きパートナーだと和樹は思っていたし百合の一番近くにいるのは自分だが、百合は今まで自分の家族や過去の話をあまり口にしたことがない



まるで空中から舞い降りて来たような存在だ、でもこの時百合が和樹を抱きしめ言った



「家庭の愛に飢えているのね・・・私と同じね・・・」



ふと百合の右手首の白い傷に目がいった、初めて二人が愛を交わした時から気づいていたが、何となく聞いてはいけないような気がしていた、そっと和樹が百合の手首を掴んで言った



「・・・この傷は?」



百合は悲しそうな顔で黙り込んでしまった、和樹はそっとその切り傷に口づけした




「僕のために二度としないでくれ」


「もう二度としないわ・・・」




百合は母親のように和樹を胸に抱いた、お互い寂しい幼少時代を過ごした境遇が似ていることで、和樹はますます彼女に親しみを持った

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