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Guest name: Ray Philipes
From: USA
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「レイ、フィリップ……。
アメリカ人の、フィリップさんか」
シェア・ビーのゲスト情報を見ていた私は、スマホをしまい、玄関の引き戸を開けた。
きょうからうちに、新しいゲストが滞在する。
そのゲストとの待ち合わせは、最寄り駅に午後3時だ。
学校のない日にお迎えにいくようになったのは、高校二年の時だっただろうか。
お迎えだって「おもてなし」のひとつだし、道に迷わないでいいと、ゲストにも好評だ。
私は駅への道すがら、照り付ける日差しのきつさに手をかざした。
まだ初夏とはいえ、6月の午後は真夏に近い暑さだ。
駅へ続く商店街を抜けた頃には、汗が額を流れる。
駅前のロータリーにバス待ちの人はおらず、すごそこのコンビニにもお客さんの姿はなかった。
改札にはまだ「フィリップさん」はいない。
私は券売機の近くに立って、電光掲示板を見上げた。
(……次の電車かな)
汗を拭きつつ、視線を改札奥の階段へと移す。
その時、真上でガタンガタンと電車が通り過ぎる音がした。
それからしばらくして、階段を下りてくる乗客の中に、一際目を引く外国人を見つけた。
(えっ、まさかあの人?)
私は思わず彼を凝視した。
ブロンドの髪に碧い目の彼は、スタイル抜群、まさに見た目完璧といった容姿だ。
男女問わず、行きかう人が彼を横目に通り過ぎていく。
シンプルな服がこの上なく似合う彼は、今なんの変哲もない改札を抜けようとしていた。
(いやいや、まさかそんなはずはないよね)
旅行者だと一目でわかるキャリーバックを持っているにも関わらず、私は彼に近付くのを躊躇う。
だってあんなイケメンに声をかけるなんて、かなりの勇気が必要だ。
(ど、どうしよう)
腕時計に目を落とす彼を見て、私も時計を見やる。
針は待ち合わせの3時から、少し先を指していた。
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