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ミリーは知らないが、この商店街の少し北にはロイヤル・スター・ブレックファーストの対抗組織であるグリーンピース・アンド・スコーンの本拠地のパン屋があった。
グリーンピース・アンド・スコーンの黒い魂の人々も溢れかえる火だるまの人間に向かって、トンプソンマシンガンなどの銃で応戦をしていた。
一人の黒い魂の男がミリーに駆け寄って来た。熱によって真っ赤な顔のその男は、早口で言った。
「さあ、早くここから逃げるんだ! ここはもう駄目なんだ! どんなに応戦しても、奴らは減らない! 仲間もたくさん死んで、俺たちの数が減る一方だ!」
火だるまの人間たちによって、バスの停留所や天幕が轟々と燃え盛る。高温と煙が人々を更に死へと誘った。
「大丈夫だから、少しここで待っててくれ……」
モートは男の肩を軽く叩いた。
ミリーは希望を取り戻したかのようにニッコリ微笑むと、小道を走り出した。
モートは燃え盛る炎の中へと飛び込んだ。
火だるまの人間たちが、あっという間に首がふっ飛んでいく。
モートは数分の狩りで一人残らず狩り尽くすと、今度は地獄の門を閉めに行った。焼き付いた地面に聳える巨大な門の前には三つの首を持つ大きな犬がいた。
The end of the world 3
窓の外はもはや真っ赤に燃え盛る太陽によって灼熱地獄と化していた。アリスは自分の屋敷の中でヘレンとオーゼムの話に静かに耳を傾けていた。細かな調度品が溶け、家具は至る所から湯気をだし、着ている服が体中の水分でびっしょりになっていた。アリスの強く握った両手からは汗が床に滴り落ちていく。それでも、オーゼムの顔は何かに勝ち誇るかのように明るかった。
「これが世界の終末の直前の事象なんです。ですが、私はモート君に全てを賭けました。恐らく世界の終末は無事に避けられるでしょう。もちろん勝算はありますよ」
オーゼムは自信を持った顔を決して崩さなかった。世界の終末でも直立不動で常に勝ち誇った顔をしている。
「オーゼムさん? 私はどうしても納得がいかないんです。どうして我々人類は世界の終末を迎えるのでしょうか? 人類は何か悪さをしたのでしょうか? あるいは人類全体の生命の寿命のようなものが尽きたのでしょうか?」
ヘレンはアクセサリーを外しながら汗を拭ってオーゼムに真摯に尋ねているが、アリスは何事にも寿命があることに身震いした。
「ことの発端はジョンなのですよ。人類は単にその道連れなんです。そして、七冊のグリモワールが鍵なんですよ。ええと、1年前に遡りますが。その頃からジョンはグリモワールを使って、七つの大罪を世界中に広めていたんです」
「せ、世界に……ですか?」
アリスはジョンという人物を知らなかったが、犯罪を広めていた張本人なことは薄々わかったつもりだった。ジョン……ジョン・ムーア……確かに……よくある名前なのですが……。確か、昔に聞いた印象的な出来事の人物がそんな名前でした。
「オーゼムさん。ジョンはモートを知っていました。何故? モートとの関わりはまったくないはずです」
ヘレンの問いに、オーゼムはニッコリ微笑んで、
「ジョンはクリフタウンでモート君に一度、ジョンが登山中に凍死寸前だった時に助けられているのですね」
オーゼムの言葉に、いや、皮肉に、アリスはジョンとモートの数奇で歪な運命を感じた。
The end of the world 4
ザンッ。一つの首をモートは狩りとった。地獄の番犬ケルベロス。そんな名前がモートの頭に浮き出たていた。太陽の光で焦げたアスファルト上で、二つの口からの牙をモートは寸でのところで躱して隙を伺った。
猛攻を回避しながらケルベロスの一つの首に首輪がついているのをモートは発見した。どこかにこの巨大な犬の飼い主がいるのだろうか?
突然、街中に鳴り響く数回の吠え声のあと、こちらにケルベロスが突進してきた。モートは避けたが、そのままケルベロスは街を破壊しながら突進していく。そのままここイーストタウンの商店街から東の端のウエストタウンまで走り通してしまいそうだったので、モートはすぐに後を追いかけた。
猛スピードの風の中。ケルベロスの肉体に銀の大鎌を幾度も振った。無数の鎌傷がケルベロスの身体にできたが、ケルベロスはそれでも建造物を破壊しながら走り続けた。
地獄の門が開いた。