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ウエストタウンまでモートとケルベロスが走り通すと、そこは亡者が地より蘇る死者の居所だった。傷ついたケルベロスは、ウエストタウンのパラバラムクラブの中央へと向かう。

中央に辿り着いたケルベロスの身体の鎌傷が、徐々に癒えてきた。辺りは亡者の群れの腐臭で包まれた。


The end of the world ???


「ほら、お行きなさい……私はここから動けないから……君に期待しているよ」

真っ暗な。そして、凍てつくような狭い場所に男はいた。男がそういうと、狭い場所が更に狭くなるかのような重い呼吸音が辺りを包み込む。

「さあ、君の飼っているペットはきっと、今はウエストタウンにいると思うんだ。なあ、思うんだが……世界が終わる時。たった一人だけでこの街に立っているとする。その男は一体。何を思うんだろうか? あるいはどんな気持ちなんだろうか? 想像を絶する絶望感で自殺をするのか? それとも、ただ子供のように泣き叫んでいるだけなのだろうか? それとも……? だけども、私ならきっと……」

男の目の前の人の形をした物体はこう言った。

「何でも望めばいいんだ。もはや世界は君のものだよ」

その物体はウエストタウンの方を向くと霧のように消えた。


The end of the world 5


モートは溢れかえる周囲の火だるまの人間の首と焼けただれる死者と共にケルベロスの首を狩っていた。

やっと、ケルベロスの首の数が減った。

モートは真っ赤な太陽の下で、ここからヒルズタウンの方を向いて首を傾げる。オーゼムと同じく。何ものにも見えない魂の群れがかなりの速さで迫って来るのを感じたからだ。モートは警戒して銀の大鎌を持ち直すと自分。いや、倒れたケルベロスの元へとその軍勢が現れた。

闇の軍勢。モートにはそう思えた。

骨格だけでできた馬に乗った漆黒の鎧を着た骨の軍勢だった。


モートはその中で、一際大きな骨だけの馬に乗る巨大な漆黒の霧に包まれた骸《むくろ》が、この軍勢のリーダーのように思えた。これが最後の戦いだと自分に言い聞かせて。モートは銀の大鎌で数千を超える骸骨を狩っていくことにした。銀の大鎌を持ち直し闇の軍勢のど真ん中に飛び込んだ。

一体のあばら骨に狩り込むと、乾いた音と共にバラバラに地へと骨がぶちまかれた。脆いのだ。モートはこの勢いで狩り始め。ボロボロになった剣や盾を持つ骸骨からは強さはまったく感じられない。辺りは骨の割れる音と、折れる音、金属の音が響き渡るが、おおよそ数十分で、闇の軍勢は跡形もなく消滅していった。

けれども、リーダーは幾ばくか違った。

大剣と銀の大鎌がぶつかり合う。激しい火花が飛び散る中。モートはこの骸は強いと知った。

「君は? 私と同じく罪人だね? そんなところで何をしているのだ?」

「……終わりだ」

すぐさまモートは骸の首に狩り込む。

そして、銀の大鎌に力を入れ首を遥か遠くへ吹っ飛ばした。

額に浮き出た汗を拭うと、ウエストタウンの地獄の門を閉じた。

「次は、シルバー・ハイネスト・ポールで最後だね」

シルバー・ハイネスト・ポールは火だるまの人間によって、地獄の業火に巻かれた。街の人たちが焼けただれ、倒れたものは燃え盛る。阿鼻叫喚の炎熱地獄だった。

モートは急いで地獄の門を閉じた。

「終わった……のか? これでいいのかは、正直わからない。後は……オーゼムに任せよう」

シンシンと空から光輝く雪が降って来た。

真っ赤な太陽は厚い雲によって覆われ所々から光が降り注いだ。

ここホワイト・シティを包み込むかのような神々しい雪は、優しく空から舞い降ちる。いつもの落ち着いた寒さを街は完全に取り戻した。倒れたゴシック様式の建築物も、火炎によって破壊された街並み。熱によって割れた道路。火だるまの人間。燃え盛る路面バス。それらが全て光り輝いた。

「元に戻った……?! やったぞ!! オーゼムの研究は……」

モートは驚いて叫ぶが。

周囲に街の人々が集まり、その大歓声によって、モートの言葉は瞬く間に掻き消されていった。


その時、大きな音と共に空が割れ。神々しい光が発した。

光の中から白を纏った人たちが雲の間から現れて、ここホワイトシティを見下ろした。


さながら、今この地に生きている全ての人々を祝福しているかのようだった……。

夜を狩るもの 終末のディストピア

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