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広場をあとにして、ぶらぶらと歩く。
「なんやかんやで1人を満喫してる…」
いつもは4人で行き当たりばったりな感じで遊んでるから、こんなにゆっくりと時間を過ごすことに慣れない。
それでも変に考えなくて済んでいることは助かっていた。
「たまにはいいのかもしれないな」
欲しいものも買えたし、美味しいものも食べたし。
心の充電はできた。
そろそろ駅前に戻って本を回収して帰ろうかと踵を返して歩いていた。
「トラゾー?」
「…?、え…?」
「「「あ、やべ」」」
俯き気味になっていた顔を上げると、疑念の元になってる人物たちが目を丸くして立っていた。
「…よ、よっ…」
ぎこちないぺいんとの笑顔。
「…ト、トラゾーさんもお出かけしてたんですか?」
引き攣ったような笑顔のしにがみさん。
「、俺たち、たまたま駅のとこで会って…」
クロノアさんのどもった言い方。
「……そうなんだ。俺は今から帰るとこ」
直感で嘘だと気付く。
けど、それを指摘できないのはこの関係を壊したくないから。
「……えっと、トラゾー、なんか珍しい格好してんな」
少し後ろに下がろうとしたとこでそう言われた。
「…似合わない?」
「いや、いつもより可愛ぃ…」
じり、と少しづつ後ろに下がる。
可愛いのは置いといて。
「店員さんに似合いますよって選んでもらったんだ」
「男?」
「?、女の人ですけど…」
気になるところか?と思いつつ答える。
また少し下がる。
「ぺいんとたちはこれから遊びに行くんだろ?……俺はもう帰るから」
俺だけ除け者にされている。
嫌われたのか、何かしてしまって避けられているのか。
思い当たる節はない。
でも、無意識にしてしまっていたら…。
「あ、トラゾー…」
「…また月曜日な」
これ以上ここにいたら泣いてしまう。
3人で何をしていたのかは分からない。
でも、俺だけが仲間外れにされてる。
何かを隠されてる、そんな気がした。
「(俺の弱虫、…最低だ、…俺って)」
疑うなら聞けばいいのに。
きっと教えてくれる。
それなのに聞けないのは弱虫で卑怯で情けない自分がいるから。
早足に駅に向かう。
追いかけては来なかったようだ。
追いかけてきてほしくはなかったが、いざ誰もそうしてくれいのもそれはそれで悲しかった。
「は、ははっ…、俺、嫌われてたのか」
じわりと目元が熱くなる。
俯いて涙を堪える。
こんなとこで泣くな。
我慢するのは慣れてるだろ。
ふと、影がかかった。
「ねぇ、きみ1人?」
「へ…?」
声をかけられなんなんだ今日は、と顔を上げる。
そこには20後半くらいの男の人が立っていた。
「おれ、ですか?」
「うん。可愛い子がいるなって思って声かけたら思った通りだったからさ」
イケメンと称されそうなその人は俺のすぐ近くに立つ。
そのいきなりの距離感に、嫌悪した。
ぞわりと鳥肌が立って半歩下がる。
「ぃや、あの…友達と待ち、合わせしてるんで…」
「友達ってさっきの3人?」
「っ、」
一体どこから、いつから、見てたんだ。
それに対しても、嫌悪を通り越して気持ち悪さを感じて更に下がる。
が、手を掴まれた。
全身に鳥肌が立つ。
「あ、なた、には関係ないで、す。離して、ください…!」
「オレと遊んでくれるなら離してあげるよ?」
肌を撫でられて、叫びそうになった。
「お待たせー。いやぁ、ごめんごめん。電車遅れちゃってさ」
ぐい肩を引かれて男の人と距離を取らされた。
「あ、…」
聞いたことなある間延びしたような声。
引かれた方を見るとにっこり笑うらっだぁさんがいた。
「ほら、行こ?」
話を合わせて、と目で訴えられる。
「っ、…ぁ、はい。行きましょう」
肩を引かれてその場から離れる。
あの人は諦めたのか追っては来なかった。
舌打ちのようなものは聞こえたけど。
「トラゾー大丈夫か?」
「助かり、ました…」
ほっとした表情のらっだぁさんを見て、保っていた箍が外れて涙が落ちた。
それは止まらなくてボロボロと落ちていく。
「え⁈ちょっ、トラゾー⁈」
「ぅ゛、ごめん、なさい…っ」
止めなければいけないのに止まらなくて。
「あー…とりあえず、静かな場所に行こう」
「はぃ゛…」
手を今度は引かれる。
俺は下を俯きながら大人しくらっだぁさんに着いて行った。