保健室に運ばれた涼ちゃんは、保健室の先生に軽く肩を支えられながらベッドへ向かった。
「あらあら……無理しちゃったのね」
白いカーテンの向こうで、
ベッドに横になる。
視界がぼんやりして、
天井の模様が少し揺れていた。
どれくらい経ったのか分からない。
涼ちゃんはゆっくり目を覚まし、
少しだけ寝返りを打って、そのまま静かにしていた。
……そのとき。
カーテンが、わずかに開く。
「起きてるか?」
担任だった。
隣の椅子に腰掛け、手に持っている紙に目を落とす。
「お前さ、朝ごはん抜きで、昼も全然食べてないんだって?」
淡々とした声。
「おまけに長袖で体育。そりゃ倒れるだろ」
「……」
藤澤は何も言えず、
布団をきゅっと引き上げて、顔の半分まで隠した。
「ごめんなさい……」
小さな声。
担任はため息をつくわけでもなく、
ただ静かに言った。
「しっかり休めよ」
「血糖値低いんだから」
それだけ言って、
椅子を引く音を残し、出ていった。
カーテンが閉まる。
(……ああ、ほんと最悪だ)
藤澤は天井を見つめた。
倒れたこと。
みんなに見られたこと。
元貴に心配させたこと。
全部、面倒で、情けなくて。
(ちゃんとやってたつもりなのに)
そう思った瞬間、
保健室のドアが、ガラガラと小さく開く音がした。
足音。
カーテンの外で、一瞬、止まる。
「……藤澤、いる?」
聞き覚えのある声。
若井だった。
(……え)
涼ちゃんは一瞬、息を止めた。
カーテンが、少しだけ開く。
若井は中を覗いて、
ベッドに横になっている先輩を見て、言葉を失ったように立ち尽くした。
「……思ったより、やばそうだな」
その一言は、
責めるでも、優しすぎるでもなくて。
ただ、
“現実を見た人の声”だった。
涼ちゃんは、布団を握りしめた。
元貴じゃない。
笑って誤魔化せない相手。
距離を取っていたはずの若井が、
今、ここにいる。
(……最悪)
でも同時に、
胸の奥が、少しだけざわついた。
この先輩の秘密に、
初めて真正面から触れる人が、
今、目の前に立っていた。






