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38 - 第38話 旦那の秘密

2025年02月04日

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◻︎旦那の浮気?



買い物から帰って家に入ろうとしたら、玄関に人影が見えた。


_____お客さん?知らない人たちだけど


若い女性と、そのお母さんらしき年代の女性と2人。


「うちに何か用ですか?」

「田中さんですか?奥さん?」

「えっと、はい、この家のものですが」

「ご主人、おみえになります?」

「ちょっと待ってくたさいね」


私は玄関ドアに手をかけたが、鍵がかかっている。


「出かけたみたいですね、車はあるから近所のコンビニにでも行ってるのかな?」

「逃げたんじゃないですよね?」


お母さんらしき人が冷たく言った。


「は?なんで?そもそもどなたですか?」

「佐伯といいます、こちらは娘の愛菜まな。お宅のご主人とは同じ勤め先です」

「その佐伯さんが、うちの主人に何の用ですか?」


相手の語調が強いと、思わずこちらも強くなる。


「お母さん、帰ろうよ、もういいから」

「何言ってるの!このことは奥様にもお話しして、きっちり決着をつけてもらいましょう。娘が傷物にされて黙ってる親がどこにいるんですか!」


お母さんの声が大きくなってきた。

このままここで話されたのでは、またおかしな噂になってしまう。


「あの!なんだかよくわからないですけど、とにかく中にお入りになります?ここではなんですから。そのうち主人も帰って来ると思いますので」


_____娘が傷物?


何が何だかわからないけど、そんなあの3人組の好物そうな話を、こんなとこで繰り広げるわけにはいかない。

うっかり聞かれでもしたら、またとんでもない噂になる。


「わかりました、失礼して上がらせてもらいます。ほら、あなたも行くのよ、愛菜!」

「えっ、でも…」

「どうぞ、散らかってますけどね」


2人をリビングに通して、夫のスマホに電話をかける。


『もしもーし』

「あのさ、いまどこ?」

『コンビニ、もうすぐ帰るよ』

「走って帰ってきて」

『え、なんで?あ、美和ちゃんの好きなみかん牛乳寒天買ったよー』

「ありがと、じゃなくて、お客さんだから急いでね」

『了解』


スーパーで買ったものを冷蔵庫に入れて、お茶を用意した。


「すぐに帰ってくるみたいなので、しばらくお待ちくださいね」

「そうさせてもらいます。逃げたんじゃなくてよかったわ」


なんとなく、ふんぞりかえったお母さんとは対照的には、小さく丸くなっている。

震えているようにも見えた。


「ただいま!」

「おかえり、こっち来て」


スリッパの音がして、ドアが開いた。


「あ!」

「課長…」


ま、あきらかに同僚というか、部下なのは間違いないらしい。


「あなたが田中隆一さん?」

「えっと、はい、そうですが…」

愛菜まなの母親です。今日は、娘のお腹のあかちゃんのことについて伺ったんですけど…言ってる意味、わかりますよね?」

「はぁ?!」


私の声が一番大きかった。



「えっと…その…なんというか」


珍しく夫がモゴモゴ言ってる。

夫の部下だという愛菜は、下を向いて両手を膝の上に置いたまま、肩を震わせている。


「しらばっくれるおつもりですか?」


グイッと一歩前へ出て、夫に詰め寄るお母さん。


「いや、そんなつもりはないんですけど」

「じゃあはっきりしてくださらない?奥様もいらっしゃることだし」

「あー、私は後で説明してくれたらいいから」

「えっ、どうして?ご主人が浮気して妊娠させたんですよ!よく、そんな他人事みたいに落ち着いてらっしゃいますね。うちは娘を傷物にされてるんですよ、慰謝料も払ってもらいますからね」


_____どうするつもり?


私は目線だけで夫に問いかけた。

夫は、へったくそなウィンクで、“大丈夫”と答えた。

任せておくことにする。


「こっちには、証拠もあるんですからね」


そう言ってテーブルに出されたのは、堕胎の同意書。


_____あー、間違いない夫の字だ


「そっか…産むつもりなんだね」

「…」


愛菜は黙って頷いた。


「ちょっと、あなた!あなたの子供なんでしょ?無責任にもほどがありますよ!こうなったら訴えますよ、強姦されて妊娠させられたと」

「それはちょっと困りますね」


あっけらかんと答える夫。

私は少し離れてことの成り行きを見守ることにした。


_____堅焼きせんべいは、頭蓋骨に響くわぁ


バリボリとせんべいをかじる。


「ちょっと奥様!なんでそんなとこでせんべいなんか食べてるんですか!?こっちへ来て、ご主人の後始末をしてください!」

「えー、夫がしでかしたことの後始末をなんで私が?」

「キーーーッ!!!」


猿かと思った。


そのあとは、真っ赤な顔をしてワナワナしている。


「よくわからないんだけどさ、これ、どうしたらいいと思う?愛菜…さんだっけ?うちの夫からじゃなくて、あなたから詳しく聞きたいんだけど」


私はできるだけ平静に、話しかけた。

その間にも、母ザル…じゃないお母さんは怒り出しそうだったけど。


「す、す、すみませんでした!」


いきなりの愛菜の謝罪の大きな声に、びっくりした。


「びっくりした、そんな大きな声じゃなくても…」

「いえ、すみません、本当に。課長は私のことを心配してくれて相談に乗ってくれた、それだけです」


ほらね、という夫の顔。


「えっ!どういうことなの?説明してちょうだい、私はてっきりこの人が…」

「お母さん、少し落ち着いて、話を聞きましょうよ」


あたふたとしているお母さんに、お茶をすすめる。


何かの覚悟を決めたように、愛菜はゆっくりと話しだした。








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