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君と見つけた片割れ時の一等星

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君と見つけた片割れ時の一等星

5 - 1-04 運命という名の最悪の出会い

♥

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2024年09月20日

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ガラガラ……と教室のドアを閉め、夕日が沈み真っ赤に染まる廊下を歩きながら俺は、楓音と待ち合わせをしている校門へと向かって歩いていた。

俺達はいつも一緒に帰っているのだが、生徒会の仕事で遅れてしまいかなり楓音を待たせていることになる。少し早足で歩きショートカットをしようと、校舎裏を通り抜けようかと思ったとき、強烈な音と共に悲鳴が聞えてきた。

何だか嫌な予感がし、喧嘩でもしているんじゃないかと恐る恐る声のする方へ近付いていく。するとそこには二人の男子生徒の姿があった。一人は地面に倒れており、もうひとりはその倒れた男子の胸ぐらを掴み上げていた。

その男子生徒が誰か分かった瞬間に俺は、無意識のうちに駆け出していた。

それが正しいことだと思ったから。


「やめろッ……!」


そう言って飛び出したものの、殴っていた男子生徒と目が合い俺は固まってしまった。

黒曜石のような瞳に、少し赤くなった黒いツンツンとした髪、殴っていた生徒の返り血だと思われるものが頬や白い制服に付着していて、その風貌はまるで不良そのもので、正直怖かった。

でも、何故か目が離せなくなった。時間が止ったかのように。

楓音のような愛らしさも何もないのに、ただ恐ろしいだけなのに、その恐ろしさや狂気の中に何かを見いだしてしまったような。

そんな風に俺が返り血を浴びて笑っている男子生徒を見ていると、彼の口角がぐいっと上に上がり殴っていた生徒を掴みあげると俺に向かってニッコリと満面の笑みを向けた。


「なーに見てんだよッ」

「……ガッ」


そう彼が言ったのと同時に、俺の腹めがけて殴られて気を失っていた生徒を投げつけてき、俺はそのまま後方へ吹き飛んだ。


「かっ……はァッ」

「お? 気絶してないじゃん、おもろ。なあ、痛かった? 痛かったよなァ♥」


俺の顔の前にしゃがみ込み、ニヤリと笑う男子生徒。

その目には光など灯っておらず狂気が渦巻いており、その目を見ただけで背筋が凍りついたのが分かった。逃げなければ殺される。本能的にそう感じた俺は立ち上がろうとするものの、先ほど腹に直撃した生徒が重く身動きが取れなくなっていて、且つ先ほどぶつかった衝撃で腹に痛みがジンジンと残っていた。

俺が立ちあがれずにいるのを見て彼は、楽しそうに笑い始めた。


「何が可笑しい」

「いやだってさぁ~、お前面白れェもん」


そう言うと、男子生徒は俺の上に乗っかっていた生徒を蹴飛ばし退けると、今度は俺の首に手をかけ絞めてきた。

息が詰まり、意識が飛びそうになる。必死にもがくもののびくともせず、苦しくて涙が出てくる。このままでは死んでしまう。何とかしないと……。

俺は薄れゆく意識の中で男子生徒の手を掴むと爪を立てた。すると、男子生徒は何かに気がついたかのように俺の首にかけていた手を離し、俺を見下ろしていた。正確には、俺の左腕にはめてある生徒会役員の腕章を見ていたのだ。


「お前、超人クラスの奴?」


男子生徒は、少し冷めたような口調で俺に尋ねてきた。超人クラスとは、推薦合格者だけを集めたコース、白瑛コースの事を指しているのだろう。

俺は男子生徒の問いかけに対し首を横に振る。

しかし、彼が間違えるのも分からなくない。

生徒会に入れるのは白瑛コースの人、それもこの学校の理事長が直々に選ぶというのだから。そのため、生徒会というのは絶対的な力を持ち、普通コースや国際コース、商業コースからは選出されない、言わば学校のトップと言っても過言ではない。

だが、俺はそんな生徒会に普通コースの人間でありながら選ばれ、入ることとなった。入学したその日に理事長室に呼ばれ生徒会役員の一人に任命されたのだ。理由は未だによく分からない。

俺の答えを聞いた男子生徒は、つまらなさそうに舌打ちをし、俺から離れていった。そして、地面で倒れていた生徒の方へ歩いていき、蹴り飛ばした。それから、馬乗りになり拳を振り上げそして勢いよく振り下ろす。既に、気絶しているというのにまだ殴るのかと俺は叫んだ。


「おいッ! それ以上、殴ったら……!」

「殴ったら何? こいつ、死ぬ?」


男子生徒は振り返らず、淡々と言葉を吐いた。とても残忍な口調、暴力を振るうことに一切の躊躇いがない。

それと同時に、俺の中で何かがぷつんと切れるような音が聞えた気がした。

俺は男子生徒に向かって駆け出し思い切り体当たりをした。すると、男子生徒はそのまま地面に倒れ込んだ。

すかさず俺は立ち上がり、倒れたままの生徒の肩に腕を回し引きずってその場を離れようとした。


「ハハッ♥ 何処行くんだよ!」

「ひぐゥ……ッ!」


ゴキッと背骨が聞いたことのない音を立てる。自分が彼に蹴られたんだと分かったのは、俺が地面へ倒れた後だった。激痛で立ち上がることが出来ず、背中を抑えながら咳き込んでいると、俺の頭を踏みつけてくる。


「勝手に俺から逃げられるとでも? ほんと面白れェ奴」


そういい、グリグリと頭を踏んでくる。


「俺はい……から……」

「あ?」

「この男子生徒は見逃してやって、くれ」


俺の言葉に男子生徒は、目を丸くし驚いた様子を見せた。

そして、次の瞬間には声を上げて笑い始めた。

ひとしきり笑うと、俺の髪を持ち上げ顔を覗き込むようにしてにたぁと笑う。まるで、面白い玩具を見つけたかのように。

その目は、先ほどまでのような狂気に満ちたものではなく、ただ純粋に楽しそうなものだった。無邪気な子供といった感じ。

そして、男子生徒は俺の髪から手を離すとそのまま立ち上がった。


「てか、こいつがちょっかいかけてきたんだし、俺被害者」


と、男子生徒は気絶している生徒を指さして感情のない顔で俺を見た。

そういえば、確かに倒れている生徒は屈強な体つきをしており、制服の上から見ても筋肉質だということが分かる。

体育会系の部活だろうと容易に想像はつくのだが、そんな彼がぼこぼこにされるほどこの目の前の男子生徒は強いと言うことになる。だが、ちょっかいをかけてきたからといって半殺しに……暴力を振るってイイ理由にはならない。


「肩当たったんだよ。なのに、謝んねェの。だから、殴った」


悪びれた様子もなく、そう言った。

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