電話を切り、すぐさまころねのいる席に向かう。
もらる「ころ、今からハルが来てくれるからここにいるんだよ。いい?」
ころね「え、なんで??」
もらる「なんででも。絶対にカフェから出ないでね…お願い。」
…僕は今どんな顔をしているのだろうか。”また”誰かを失いかもしれないという恐怖で歪んだ顔だろうか。それともなんとか取り繕って笑っているのだろうか。そんなことさえも分からない。今唯一分かっている自分の事、それは…
ころね「お兄ちゃんまっ…」
―――何があっても揺らがないこの”借りもの”の決意だけだ。
自分がどうなっても大切な人達をを守るという何ともあざ笑われそうなそんな決意。…でももうそんなことどうだっていい。僕は守りたいものを守る。ただそれだけだ。…たとえ、その人が望んでなくても。
僕はころねの呼び止める声を無視してカフェを出て、防壁スキルを使う。
もらる「…”風精霊魔法。シルフの風壁”」
魔法を詠唱した瞬間に暴風を伴った竜巻がカフェを守るように発生する。それを見届け、僕を感情の分からない目で睨んでいる群衆と対面する。
もらる「…始める前に一つ聞きたいことがあります。」
もらる「なぜあの子が殺されなきゃいけなかったんですか?」
もらる「殺す理由があったの?」
もらる「それとも元々そういう運命だったの?…いや、違うよね。」
もらる「貴方達は神の加護を維持するための”生贄”とか言ってたけど”彼女”は何も知らなかった。…ただ貴方達に殺さただけです。」
もらる「…もう、殺すことを快楽と感じるお前達には絶対わからないだろうけど。」
その言葉言い放った瞬間に群衆は顔に狂人の歪んだ笑みを貼り付けた。右手に小刀やナイフを持ち、彼奴等の宗教の象徴、骨のネックレスを提げて一斉に八方から一斉に飛びかかってきた。その瞬間に一気にどす黒い何かが腹の奥からこみ上げてきた。でもその正体はもう分かっていた。
―――これはもう怒りや憎しみなんて生易しいものじゃない。これはもう殺意だ。
八方から彼らが攻撃を開始しようとしていた時、もらるの中ではおかしなことが起きていた。
『No world axis.(世界軸が存在しません)』
『…👎⚐☠🕯❄ ✡⚐🕆 💧❄✋☹☹ ☼☜💣☜💣👌☜☼✍⚐☞ 🕈⚐☼☹👎 ✌✠✋💧(…君はまだあの世界軸を思い出せないのかな?)』
誰?知らない声。でも…どこかで…
『❄☟☜✡ ✌☼☜ 🕈✌✋❄✋☠☝ ☞⚐☼ ✡⚐🕆 👍⚐💣☜ ⚐☠📪 👎☼✌🕈 ⚐🕆❄ ✡⚐🕆☼ 👎☜❄☜☼💣✋☠✌❄✋⚐☠🕆💧☜ ✡⚐🕆☼ ☼☜💧⚐☹✞☜📬📬📬 ☠⚐📪 🕆💧☜ ✡⚐🕆☼ ☼☜💧⚐☹✞☜📬(”彼ら”は君を待っている。さあ、君の決意…いや、君達の決意を使ってみなさい)』
―――ああ、最初からそのつもりだよ”____ ”。=)
*さあ始めよう、もらる。殺戮を、君の大切な人を助けるための裁きを。
――うん、Chara。
誰かも知らないその人に返事をしたとき、自分の中で何かが変わったことを感じた。
*私の…いや”私達”のソウルを使えばいい。さあ、楽しい悪夢にしようじゃないか=)
*――まあ、君には悪夢はもう十分すぎるだろうけどね。
次の瞬間、大勢で飛びついてきた狂人達は血を撒き散らしながら屍へと変わっていく。…たった一人の殺意を浮かべている真紅と黄金色の目の青年によって。
もらる「…もう、終わり?」
もらるは顔色を変えずに群衆に向かって問う。群衆はいきなりの事に戸惑うようもなく、その問いに応える様子もなくただもらるの喉笛に向かってナイフを突きつける。
もらる「…ねえ、そのくらいで僕を殺れると思ってるの?」
もらるはそう言うと右の指同士をすり合わせて音を鳴らした。次の瞬間、彼の後ろに円を描くように赤いナイフが出現していた。そのナイフは出てきたと同時に刃先に群衆を捉えているのがわかる。群衆がもらるに再び攻撃を仕掛けようかと動き出したと同時に彼のナイフはもうすでに彼らの命を絶やしていた。
もらる「人の命は儚くて脆い。…そう思わな…」
先程攻撃を仕掛けた中の生き残りの一人が彼の喉をめがけて小刀を振った。だがそれは虚空を切り、身をかわした彼にナイフを刺されてその人は絶命した。
もらる「…いらしいね。まあ、予想できたことだけど。」
春樹「…もらる!」
もらる「…ハル」
春樹「親父がこれを…」
ハルはそう言うと上着のポケットから黄金色のハート型のロケットを渡してきた。
もらる「!」
――もらると狂人達の戦闘開始前約3分前
春樹「…親父、ちょっと行ってくる」
春樹父「もしかしてデパート方面か?」
春樹「…ああ。」
春樹父「もし、もらるくんの所に行くならこれを持っていきなさい」
春樹「…このロケットは?」
春樹父「もらるくんの物だ。どうやら”その時”が来たようだからね。返しといてくれ」
春樹「…分かった。」
彼はそのロケットを見た瞬間、驚き、まるで人が変わったかのように殺気が大きくなった。そしてもらるはロケットを着け、一言だけこう言った。
もらる「…ありがとう。”春樹くん”はころね”ちゃん”と逃げて。」
春樹「…ああ。…?」
もらる「”私”は今から本気で”狩る”から…絶対振り返ったらだめだよ」
…いや、本当に人格が変わったんだ。このことは後日詳しく聞こうと思いつつ今は避難を最優先にするべく、竜巻の中へと入る。
ハルからもらったロケットを見ると、前世…?の記憶の片鱗が蘇った。最初に映ったのはみんなの笑う声。次に見えたのは血に濡れた自分の手と真っ赤な血の絨毯。――、一体僕は前世で何をして…
―――選手交代だ。もらる、思い出してきな。
その声が聞こえた瞬間自分の体の感覚が無くなり、記憶の世界に入った。
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