TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

『こっちに来て』



え…



すごく甘い声…



私の好きな雰囲気の声だ。



何だかドキドキして、本宮さんが呼んでくれてるのに、私はその場で立ったまま動けなくなった。



そんな私を見かねて、



『だから気にするなって言ってるだろ』



そう言って立ち上がり、私の方に向かってきた。



待って、来ないで…



そして、すぐ目の前に来た時、私のあごを指で優しく上に押し上げた。



これって…



可愛い女の子が、かっこいい男子にしてもらえるやつじゃないの?



だったら、これは…



私なんかじゃ…ダメだよね。



自然に顔が本宮さんと向き合う…



私は、その美しい瞳に見とれてしまった。



スーッと奥まで吸い込まれそう…



数秒の沈黙の後、



『可愛い…よ』



って、本宮さんが嘘みたいなセリフを言った。



イケメン過ぎる顔が、ゆっくりと私に近づく。



このまま…



キスしてもいいかな…



って、一瞬、本気で思ってしまった。



でも…その時、一弥先輩の笑顔が浮かんできたんだ。



ダメだ!



そう思ったとたん、私は本宮さんから離れた。



『私、可愛くないですから。すみません』



と、後ずさりしながら、私はまた下を向いた。



『自分に自信が無いって言う気持ちはわかる。俺も…まだまだ自分に自信が無いから。でも、恭香には、もっと自信を持って欲しい。目の前でお前の素顔を見てる俺が言うんだ。だから、間違いない。恭香は…』



また数秒の沈黙。



その静寂の中で聞こえたのは、本宮さんが息を飲む音だけだった。



『本当に可愛いよ』



そうつぶやいた瞬間、本宮さんは少し顔を赤らめて、



『…の、喉乾いてるだろ。恭香も何か飲んだらいい』



そう言って、元の場所にさっさと座った。



まるで、さっきまでの夢のような時間が何も無かったかのように…



怖いだけの人だって思ってたけど、本当は…



優しい一面も持ち合わせてる人なのかも…って、ちょっと思い直し始めてた。



本当に私を可愛いなんて思ってはいないだろうけど、私を傷つけないように言葉を選んでくれてた。



やっぱり、何か理由があるのかな…



ここに来たことも。



この人の全てを理解するには、まだまだ時間がかかるのかも知れない。



今日はちょっと疲れたし、もう休もう。



私は、本宮さんに『おやすみなさい』と言ってリビングを出た。



本宮さんは、もう少し起きてるのかな…



布団に入って目を閉じると、今度は一弥先輩じゃなく…本宮さんの顔が浮かんだ。



状況が状況なんだから、仕方ないよね。



今は、こんな近くに…



本宮さんがいるんだから。



でも…



私が好きなのは、一弥先輩。



さっきも一弥先輩が思い浮かんだから、本宮さんとキスしなかったんだ。



もし、思い浮かばなかったら…



もしかして、私…



正直、今となってはわからないけど…



いろいろ考えてるうち、私はいつの間にか…



深い眠りについていた。

loading

この作品はいかがでしたか?

44

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚