朝になって、お互いそれぞれの部屋の目覚ましで起きた。
本宮さん、寝起きはいいらしい。
洗面所やトイレはダブらないように順番に使った。
食事は…
食パンとジュースとヨーグルト。
本宮さんは、パンを焼いたりいろいろ手伝ってくれた。
手際がいいんだ…
『これから食事は一緒に作ろう』
『え?作れるんですか?』
『簡単なものなら』
『すごいですね…じゃあ、今日はどうしますか?』
『帰りにマンションの近くのスーパーで買い物して、そこで決めればいい』
仕事終わりに買い物して、一緒に料理して、何だか…本当に夫婦みたい…
って、ちょっとワクワクしてる自分がいた。
『はい』
『それから…』
食事をテーブルに並べながら、本宮さんが、
『いい加減二人の時は朋也って呼んでくれ…』
『あ…そうですね。わかりました…と、朋也さん』
私、意外と違和感なく朋也さんって…呼べたんだ。
『やっとだな。これからは必ずそう呼ぶこと』
『…はい、わかりました』
私は苦笑いしながら返事をした。
本当に、強引なんだから…
一緒に朝ごはんを食べ、片付けて、そして出かける支度をして…
これから毎日こんな感じなんだ…
まだまだ私達の関係性もハッキリしないままで、不思議な感覚だけど…
でも…とても新鮮だ。
生まれて初めての体験。
『行くぞ、恭香』
一緒に部屋を出て、エレベーターで下に降りた。
いつものスーパーの横を通り、駅についた。
電車は当たり前のように混雑している。
『毎日こんな感じですよ。めちゃくちゃ混んでますし、通勤大丈夫ですか?』
『電車大丈夫だって言っただろ。平気だから心配しなくていい』
私達は、しばらく電車に揺られ、会社のある駅に着いた。
そこからは、お互い離れて歩く。
まだ一緒に住んでることは…
誰にも内緒。
特に、一弥先輩には…
会社に着いてミーティングルームに入ったら、石川さんが私に言った。
『森咲さん。今日、今の企画の企業さんと会食だから付き合って。時間は夜7時、いいね』
『今日ですか?突然…なんですね』
たまにあるんだ、そういう会食とか…いわゆる接待みたいなこと。
それに、結構な確率で私が呼ばれる。
私なんかより、菜々子先輩や夏希、梨花ちゃんの方がいいと思うのに。
『僕も同席しましょうか?』
私の後ろから声がした。
『本宮君』
石川さんが、驚いたように言った。
『相手企業の方、俺もよく知ってるので』
『あ、そうなんだね。そっか…ただ、今日は女性の方が来られるから、こちらも森咲さんでお願いしたいんだけどね…』
『石川さん、私行きます。大丈夫です、本宮さん。私行きますから』
あまりごねると、石川さんの機嫌をそこねるから…
『そうしてくれたら助かるよ。じゃあ、6時に会社を出よう』
石川さんが言った。
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