テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

2



付き合っていることは、ふたりだけのナイショ。

蒼とそんな約束を交わした私だけど、ひとりだけ、例外にしようと思っていたコがいた。

生徒玄関に入ると、明姫奈がちょうど靴を履きかえていた。

明姫奈とは、あれから丸二日話していない。こんなに話しないのは初めてだ。

頭ごなしに蒼をつっぱねた頑固な私に腹をたててしまった明姫奈。

今になってみれば、全部、明姫奈の言う通りだったと思う。

私はきっと、もうずっと前から蒼のことを好きだったんだ。

でも、それを認めたくなくて、自分の気持ちを見つめることから逃げていた。

明姫奈には、そんな私のことがお見通しだったんだ。

明姫奈が、ああやってガツンって私を突き離してくれなかったら、もし、私を甘やかして、明姫奈の家にかくまってくれていたら、私と蒼は、ずっとすれ違ったままだったかもしれない。

明姫奈は、ちょっと性格キツめの恋のキューピット。

そして、頼りがいのある、かけがえのない親友だ。

そんな大切な明姫奈と、全然話しないままでいれないよ。

だから、『ごめん』と『ありがとう』の気持ちを込めて、蒼とのことを報告しなきゃ、って思っていた。

「明姫奈…おはよ」

思い切って、声をかけた。

「おはよ…」

よかった…!ちゃんと返してくれた…!

合わせてくれない目は、気不味そうに床を見つめている。

しばらく、お互いに押し黙っていたけど―――

『ごめんね』

ユニゾンした言葉に驚きながらも続けたのは私だった。

「どうして明姫奈が謝るの?」

明姫奈も私と話したがってたんだ、ってことがわかったのが嬉しくて、泣きそうになるのをこらえながら、私は首を振った。

「明姫奈の言う通り、私はわからず屋の子供だったんだよ…。明姫奈が謝る必要なんてないよ」

「ちがうよ、蓮。悪いのは、私だよ…。私、あの時すごくつらくて、悲しくて…もうどうすればいいのかわからないくらい落ち込んでしまってて、つい、蓮に八つ当たりしちゃっただけだから」

「八つ当たり…?」

勝気な明姫奈の目には…涙が浮かんでいた。

「カレシが…堺くんがね…遠くの大学に行っちゃうことになったの」

「え?」

たしか堺先輩は地元の大学に行くって…。

『部活引退したら受験勉強で忙しくなるからあまり会えなくなるんだよねー。だからせめてお夜食とかお菓子とか作ってあげたいから、蓮、教えてね!』

って、明姫奈言ってたのに…。

「バスケで推薦の話が来て…。やっぱりバスケが好きだから行きたいって、決めちゃったの」

「明姫奈に相談もしないで?」

こくり、とうなづいた。

「そんな…ひどいよ、先輩…」

明姫奈は泣きそうな顔に大人びた微笑を作った。

「仕方ないよ…。私だって好きなバスケ続けて欲しいって思うもん。たとえ相談されてたって、『いいよ』って言っていたと思うし…。遠距離にはなるけど、別れるわけじゃないし…」

でもね、と続けて、明姫奈はうつむいた。

「それを聞いたのがちょうど、三日前の夜で…。聞かされた時ショックですっごい泣いて、泣いて…。翌日の学校にもどうにか来れたって感じで…落ち込んでたの…。だから、蓮の蒼くんとのこと聞いた時…つい、嫉妬しちゃったの。『幼なじみと付き合ったら、いつも一緒にいられるのに、ズルイ』って…」

「そう…だったんだ…」

「完全に八つ当たりだよね…。いつも落ち着いている蓮があんなに慌てるなんて、よほど困っていたのに…。ごめんね。私、ひどい友達だったね…」

「そんなことないよ…!私の方こそ、明姫奈がいつもより元気ないの気づいていたのに、自分のことで頭が一杯で…ごめんね」

「…仲直り…してくれる?」

「もちろんだよ。私、明姫奈よりずっとお子様で役に立たないかもしれないけど…なんでも聞くし、元気出したい時はどこでも一緒するよ」

「ありがとう、蓮…」

明姫奈の可愛い顔に、やっと笑顔が戻った。

「あ、あと、大好きなシュークリームもいっぱい作ってくるよ!」

「それは困る。太ってフラれるわけにはいかないもん」

二日ぶりの、明姫奈の笑い声。

よかった。

まだ…作り笑いも入っているかもしれない。

けど、また二人仲良しの親友に戻れたから、少しずつ元気になってもらえるといいな…

「ところで、蓮はどうなったの…?蒼くんとは、今…」

教室に一緒に向かいながら、明姫奈がおずおずと聞いてきてくれた。

「昨日は蒼くんは風邪で休んでたし、かと思えば蓮も急にサボっちゃうし…。昨日はびっくりしたよ?『真面目な蓮が』って。

…もしかして、蒼くんと関係あるの?」

私はぎこちない笑顔を浮かべてると、『実はね…』と切り出した。

「明姫奈がこんなことになってる時に言うことじゃないんだけど…私、昨日から蒼と…」

「蒼くんと…?」

「お付き合い…してるの」

「えーーーーー!!!」

廊下の端から端まで筒抜けるような明姫奈の悲鳴が響いた。

う…この様子じゃもう元気一杯だなぁ…・

「ホント!?ホントにホント!?やったぁ!やったね、蓮!初カレシ、おめでとう!」

「う、うん、ありがとう…」

「やっぱりねぇ…うんうん、そうじゃないかと思った。蓮は絶対蒼くんのこと…って!。よかったね!カレシが幼なじみなんて、すっごい素敵じゃない!」

「う、うん…ありがとう…てか、明姫奈、もうちょっと声おさえてくれる?」

「ん?」

「実は、学校では付き合ってるの隠しておこうと思って…」

「えー?どうして?」

どうしてって…

キケンなお留守番~オオカミおさななじみにご用心!~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚