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#普通
野々さくら
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ありあ
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一同はひなたに、かつて放送されていた『未解決事件調査隊』で、銚子が御船愛子として霊視した内容を詳しく説明した。
ひなたは静かに話を聞き終えると、小さく息をつく。
「なるほど・・・」
そして、ゆっくりと銚子へ視線を向けた。
「その番組内でナワバリ様って言葉を視たのね」
銚子は頷く。
「えぇ・・・」
ひなたは少し考え込むような表情を浮かべた。
「でも、その口ぶりだとナワバリ様がどんな
ものなのかまでは知らないって感じね?」
銚子は申し訳なさそうに首を横へ振る。
「ええ・・知りません」
少し間を置いて、当時見えた光景を思い返すように語り始めた。
「ただ、四肢を縄で縛られた人がいて
何やら儀式のような行為をしていた。
それくらいしか分かりません」
ひなたは静かに目を伏せる。
「それは天縁教団に古くからある
『誕生の儀式』の一部始終だと思うわ」
信愛が思わず聞き返した。
「誕生の儀式?」
ひなたはゆっくりと頷く。
「ナワバリ様はね?毎年信者の中から
無作為に選ばれた一人が、ナワバリ様として
教団が保有する村へ連れて行かれるの」
銚子は眉をひそめた。
「なら、私が霊視で見た縄で
縛られている女性は天縁教団の信者?」
「でしょうね・・・」
その答えを聞いた龍河は、すぐに次の疑問を口にした。
「でもその教団が保有する
村っていうのは、どこにあるんです?」
ひなたは申し訳なさそうに苦笑する。
「そこはごめんなさい。私も話で聞いた
だけで、実際に行ったことがないから
詳しい場所までは分からないのよ」
記憶をたどるように視線を上へ向ける。
「確か・・そう!奥多摩!
奥多摩近辺にあるって聞いた事あるわね」
「奥多摩か・・・」
龍河は小さく呟く。
ひなたはさらに続けた。
「そして、縄で縛られ、磔にされて
ナワバリ様として崇められるのよ」
「縄で磔・・・」
龍河はその言葉を反芻する。
ひなたは龍河を見つめた。
「ナワバリはね、漢字で書くと
『縄磔様』」
その文字を聞いた銚子が、はっとしたように顔を上げる。
「縄で磔にするからナワバリってことですか!?」
「そう・・・」
信愛はどこか納得したように呟く。
「領土って意味じゃなかったんだ」
ひなたは穏やかに微笑んだ。
「まぁ、ダブルミーニングって感じじゃない?
縄張りの守護神っていう意味と──
縄で磔にするという行為そのものを表す意味」
銚子は静かに問いかけた。
「なぜ天縁教団は、わざわざ
信者を縄で磔にするんです?」
ひなたはゆっくりと首を振る。
「それが分からないのよね・・・」
龍河は目を細める。
「分からない?」
「教団の上層部は『イエス・キリストのような
神を誕生させる為』って言っていたけどね」
銚子はその言葉を受け止めながら尋ねる。
「不死の神を誕生させようとしている
そういうことですか?」
ひなたは少し考え込み、慎重に答えた。
「言葉通りに受け取ればそういう
解釈になるんでしょうけど・・・」
そう言いかけたひなたは、どこか釈然としない表情を浮かべる。
「私はその理由が
どうも腑に落ちないのよね・・」
信愛は、ひなたの最後の一言に首を傾げた。
「なんでです?」
ひなたは静かに信愛を見つめる。
「アンタはイエス・キリストが十字架に
磔にされた理由を知ってる?」
突然の問いに、信愛は言葉を詰まらせた。
「えっ・・と・・・」
考え込む信愛を見て、銚子が口を開く。
「確か『見せしめ』ですよね?」
ひなたは静かに頷く。
「そう・・・」
信愛は心の中で小さく呟いた。
(あ、そうなんだ・・知らなかった)
ひなたはゆっくりと言葉を続ける。
「イエス・キリストの磔は
『崇める為』なんかじゃなくて
神を冒涜した反逆者として
『死刑』にするためだったのよ」
一同は黙って耳を傾ける。
「だけど教団は、ナワバリ様を磔に
する理由を『崇める為』と言ってる」
銚子は、その違和感に気付いたように目を見開いた。
「『見せしめの為』に磔にされたイエス・キリストと
『崇める為』に磔にされるナワバリ様
同じ磔でも経緯がまるっきり正反対ですね」
「そうでしょ?」
ひなたは静かに頷いた。
「だから私の見立てでは──
『ラショナライゼーション』を 利用した
洗脳に近い行為じゃないかと睨んでるの」
銚子が聞き慣れない言葉を繰り返す。
「ラショナライゼーション?」
「『合理化』とも言うんだけどね」
ひなたは、身振り手振りで説明を続けた。
「『都合の悪い目的』を隠して
もっともらしくて、社会的で
『受け入れられ易い理由』へ
すり替える心理のことよ」
皆がひなたの説明に、皆がキョトンとしていると、ひなたは加えて、わかりやすく掻い摘んで解説する。
「簡単に言えば『子供を難関大学に入れた親』って
言われて承認欲求満たしたいたいだけなのに
子供には『これはあなたの将来の為なのよ』
って刷り込む親みたいな感じよ」
「ああ!なるほど・・・」
龍河は腕を組みながら呟く。
「 縄で磔にされるっていう行為は
本来だったら受け入れ難いが
『神を誕生させる為だ』とか
『お前は選ばれた存在だ』と刷り込まれる事で
信者に『美化した理由』を与えるってわけか・・」
「そういう事、伝わったみたいで良かったわ」
ひなたは静かに頷いた。
信愛は、その説明を頭の中で整理しながら口を開く。
「要は『崇めるため』っていうのは建前で
本当は真の目的が別にあって、それを隠す為に
イエス・キリストの名前を使ってるって事ですか?」
「そう、まさにそういう事」
ひなたは迷いなく答える。
「簡単に言えば合理化を利用した洗脳ね」
銚子は納得したように小さく頷いた。
「なるほど・・・」
「それなら、崇めるためのナワバリ様に
見せしめのイエス・キリストを重ねている
矛盾も説明がつきますね」
龍河も深く息を吐く。
「イエス・キリストを隠れ簑にしてるって事か」
重苦しい空気が部屋を包む。
誰もが同じ疑問に辿り着いていた。
ならば、その『真の目的』とは一体何なんだ。
「なら、その真の目的って──」
コメント
1件
「ナワバリ様」が縄で磔にするからだったとは…!「縄張り」と「縄磔」のダブルミーニング、めちゃくちゃ納得しました。しかもイエス・キリストの磔刑と正反対の目的を、合理化でねじ伏せてるっていう構造が不気味で面白い。ひなたさんの「子供を難関大学に入れた親」の例え、めっちゃ分かりやすくて笑っちゃいました。でも、じゃあ真の目的って何なんだろう…ますます気になる展開ですね!