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大学の講義中。
教室には教授の声だけが響いていた。
凛花は教科書を立て、その陰に顔を隠す。
そして、そのまま机に伏せた。
凛花:(……5分だけ。)
後ろの席。
海斗はその様子を見て苦笑する。
海斗:(絶対寝る気だな。)
教授が黒板を向いた。
海斗はそっと前へ身を乗り出す。
指先で、凛花の脇腹のあたりを――
ちょん。
凛花:……っ。
肩がぴくっと動く。
でも起きない。
海斗:……。
もう一度。
ちょん。
凛花:……。
海斗:起きてるだろ。
返事はない。
海斗は小さく笑う。
今度は指先で、くすっと軽くなぞる。
くすっ。
凛花:っ……!
ぴくっと肩が跳ねる。
それでも顔は上げない。
海斗:(我慢してる。)
もう一回。
くすっ。
凛花:……っ、ん。
教科書の向こうで肩が震える。
海斗:凛花。
凛花:(小声)……なに。
海斗:起きてるじゃん。
凛花:寝てる。
海斗:喋ってる。
凛花:寝言。
海斗:器用だな。
凛花:放っておいて……。
海斗:無理。
ちょん。
凛花:っ!
くすっ、くすっ。
凛花:……っ、ふふっ。
海斗:笑った。
凛花:笑ってない……。
海斗:いや、笑った。
くす、くすっ。
凛花:っ、あはっ……
慌てて自分の口を押さえる。
教授はまだ黒板に向いたまま。
凛花は小声で抗議する。
凛花:海斗……!
海斗:ん?
凛花:やめて……。
海斗:起きる?
凛花:起きるから。
海斗:ほんと?
凛花:ほんと。
海斗:信用できないな。
凛花:なんで。
海斗:顔。
凛花:偏見。
海斗:経験則。
そう言ってもう一度。
ちょん。
凛花:っ、ひゃ……!
海斗:まだ眠い?
凛花:眠くない!
海斗:よし。
海斗はようやく手を引っ込めた。
凛花はゆっくり振り返る。
じーっと海斗を睨む。
凛花:最低。
海斗:ありがとう。
凛花:褒めてない。
海斗:知ってる。
凛花:あとで覚えてて。
海斗:仕返し?
凛花:絶対する。
海斗:楽しみにしてる。
その瞬間。
教授:後ろの2人。
凛花・海斗:!
教授:仲がいいのは結構ですが、講義にも集中してください。
凛花:……すみません。
海斗:すみません。
教室のあちこちから小さな笑いが漏れた。
凛花は真っ赤になりながら前を向き、小声でつぶやく。
凛花:……ほんとに後で覚えてて。
海斗:はいはい。(笑)
海斗は笑いをこらえながらノートを開き、今度はちゃんと講義に集中し始めた。
コメント
1件
わ、めっちゃいいですねこれ!講義中にちょっかい出してくる海斗くんと、ツンツンしながらも結局笑っちゃう凛花ちゃんの掛け合いが本当にリアルで微笑ましい。「寝てる」「寝言」「器用だな」の応酬とか完全にカップルのそれだし、教授に怒られて真っ赤になるラストも含めて、見てるこっちが顔が緩みました。二人とも可愛すぎる!