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「こちらは合計報酬金貨六十八枚となります」
そう言いながら依頼報酬を渡す受付嬢。
俺とクーインは現在依頼が終了し、冒険者ギルドで依頼終了報告をした。
しかし、やはりランク以上の敵と相対することは危険行動らしく、注意を受けてしまった。
まぁ、しょうがないが……。
でも、注意のわりにそんなに厳重に言うのではなく、軽口を言われる感覚であった。
「今回、アルトさんとクーインさんの行動は決して誉められるような行動ではありません。しかし、討伐をしていただいてありがとうございました。これで被害の拡大は防げました。今後、調査を行い、高位ランクの魔物を存在を確かめたいと思います。今回の報酬はギルドからの感謝もありますので少し多めになってます」
「わかりました」
「ありがとうございます」
俺は受付嬢から感謝かそれとも注意か分からないが言われたことに対して了承した。
その後、報酬を受け取り、ギルドを後にした。
俺とクーインはギルドへの報告が終了後、学園の寮へ向けて歩いていた。
「それにしても、結構報酬もらえたな」
「まぁね。……それにしても報酬の分け方半分じゃなくてよかったの?」
「うん。アルトがいなかったらオーガは討伐できなかったし、僕は指示に従っただけだしね」
「ならいいんだけど」
今回の報酬、クーインの提案で俺は分け前として六割もらった。
俺も反対したのだが、クーインは折れず、俺自身今どうしてもお金が欲しかった理由もあり、受け取ることにした。
俺は納得していない表情をしていたのだろう。クーインは納得していないのを察したのか、提案をしてきた。
「なら、今日晩御飯奢ってよ。僕高級料理食べたいし、ちょっと相談に乗って欲しいことあるから」
「相談?」
「うん、ちょっと最近悩みができて」
「……分かった、この前入試の時に夕食食べたところでいい?あそこ食堂もやってたはずだし」
「お!いいね。そこにしよう。もう一度そこで食べたいと思ってたんだ」
「わかった。行こうか」
クーインは何を悩んでいたのか不明だが、以前入試の時に泊まった宿へと移動した。
俺とクーインは相当お腹が減っていたのか、料理をすぐに食べ終わり、現在クーインの相談を聞くことなる。
何かあったのだろうか?
クーインから相談を持ち込まれるのは初めてで、少し話しづらそうにしているため、俺から話を振ることにした。
「で、相談事があるんだっけ?どうした」
「うん……まぁ、相談事というか、聞きたいことがあるんだけど」
「いいよ。なんでも言って」
クーインはそう前置きをしながら話し始める。
「アルトは……その……才能ないじゃん」
「喧嘩売ってるの?」
開口一口から何言ってるんだよ。
クーインは俺の反応に慌てて否定して話し始める。
「いや、違うよ。ただ、スゴいとなと思って」
「何が?」
「多分僕がアルトと同じ境遇なら、血の滲むような努力はできない。それは前から思ってたことだけど、今日のオーガとの戦闘でそれを身にしみて感じた。本当にすごいやつなんだなって」
「………」
急に褒められ、どう反応すれば良いのか分からず、俺はそのままクーインの話を聞く。
「君は自分に置かれている運命を跳ね除けてその強さを手に入れた。そんな君に聞きたいんだ」
「なに?」
「なんで君は運命を跳ね除けてられたのかなって」
「……ごめん。意味がわからない。運命を切り開いた、そう言われてもピンとこないし」
「………」
俺の回答を聞いたクーインはうつむいてしまった。
本当に意味がわからない。急に運命を切り開たと言われても困る。でも、クーインが何かに悩み、俺に相談をしてきたのだろう。力になれるかはわからないけど、答えられる範囲で答えよう。
そう思考し話を続ける。
「でも……」
「でも?」
「クーインの言う運命を切り開くと言うのが、自分のいる立ち位置に満足できなくて、足掻いて結果を求める。その観点からなら言えるよ、俺の場合がそうだったし」
クーインが満足する答えを出せるかわからないが、出来るだけのことは話そう。
俺はそう前置きをしながら話を続ける。
「どうしても達成したい目標があった。でも、それを達成するには俺は才能がなさすぎた。本来なら諦めていたかもしれないけど、それでも諦めきれなかった。だから、死に物狂いで訓練をした。さまざまな工夫をした。出来る可能性を必死に探して、僅かな可能性に縋り続けた。それらが相まって今の俺がある。クーインが何に悩んでるのか知らないけど、まずはできることを探して、行動してみたらどうかな?」
「………」
黙って聞くクーイン。俺が頑張ってきたのはサリーのことを助けようとしたため。そのために努力を続けた。才能がなくても出来ることを探して唯一の可能性に縋り続けた。しかし、決して目的を達成したわけではない。
今もなお、助けるための可能性を探り続けている。
俺に言えるのはここまで、これからはクーインが考えることであり、何もいえない。
俺はそう思いながらクーインの反応を待つ。
……言ってみて思ったけど、なんか偉そうだな。
一応謝罪しておこうかな。
「ごめん、なんか偉そうに」
「……いや、ありがとう。なるほどね……できることから始めるか……」
クーインはそう言いながら先程の何かを悩んでいた表情は無くなっていた。
「……力になれたようならよかったよ」
「さすがは僕の親友だよ。話してみてよかった」
そう、クーインは笑いながらそう言った。
……力になれたようならよかった。
俺はそう思った。
その後は俺とクーインは宿を出て学園の寮に向かった。
「今、何時だと思ってるんですか?」
「「ごめんなさい」」
俺とクーインは忘れていた。
学園の寮には帰宅時間に制限があったことを。
罰として二人揃って反省文を書かされ、一週間のトイレの清掃を言い渡された。