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かわいいかわいいひーくんだ💛 めめ🖤の優しさ絶妙😍🙌
「……見なきゃよかった、」
映画が終わって、照明をつけた瞬間。
ソファに深く沈んだままの岩本くんが、ぽつりと呟いた。
「岩本くん、怖かったの?」
「……別に?」
岩本くんの声が裏返る。
それを聞いた俺は噛み殺してた笑いをつい漏らしてしまった。
「ははっ!ホラー観ようって言ったの岩本くんなのに。」
「ちがっ、いや、それは……怖いけど無性に見たくなる時あるじゃん……目黒いるし大丈夫かなって」
拗ねたみたいに視線を逸らす岩本くん。
深夜のホラー映画にビビってるとか、ギャップ強すぎてずるい。
「もう寝よ。俺、トイレ行ってくる」
そう言って立ち上がる岩本くんが、ほんの一瞬、俺の方を見る。
その視線の意味をすぐに察した。
「……岩本くん」
「……なに」
「一緒に行こうか?」
岩本くんは、図星を突かれたみたいにピクッと肩を揺らして、それから小さくうなずいた。
「バカにすんなよ。別に、ついてこいって言ってねえし」
「じゃあ言ってないけど、行ってあげる。俺、優しいから」
そう言いながら立ち上がると、岩本くんはちょっとだけ安心したみたいに口元を緩めた。
廊下を二人並んで歩く。
足音がやけに大きく響いて、静けさが怖さを煽ってくる。
「ねえ、岩本くん」
「ん?」
「……鏡に、なんか写ってたらどうする?」
「やめろって。そういうの一番ダメなやつ」
「もし俺が幽霊だったら、どうする?」
「は? やめてよ、マジで怖い」
岩本くんが肩をすくめて俺を睨む。
「まあでも目黒だったら怖くない」
「……岩本くんさ」
「ん?」
「かわいすぎるって自覚、ある?」
「うるせー。黙ってろ」
岩本くんが少し赤くなりながら俺を軽く小突く。
その手が、ほんの少し震えてるのを、ちゃんと気づいていた。
だから。
トイレの前で岩本くんがドアを開けるのを待つ間、ふいにその手を取った。
「終わるまで、ここで待ってるから。だから、安心して」
俺のその言葉に、岩本くんは一瞬きょとんとした顔をして、それから目を細めて――
「……ありがと。好き」
小さく呟くように言って、トイレに入っていった。
静かな深夜の廊下に一人残されて、岩本くんの「好き」が頭の中を何度もリピートしていた。
「……まじでかわいいな、あの人」
ホラー映画よりドキドキしてるなんて、岩本くんには絶対内緒だ。