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やはり、どうしても生理的な嫌悪が込み上げてくる。
それでも、私の生存本能が「今は留まるべきだ」と囁いていた。
「……えぇ。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
仕方なくそう答えると、コロナリータはパァッと、それこそ子供のように顔を輝かせて立ち上がった。
「良かったぁ! じゃあ早速準備しますね! エカテリーナさんたちはここでゆっくりしていてください」
彼女は扉に手をかけたところで、ふと思い出したように「あ、そうだ」と、人差し指を立てた。
その仕草一つ一つが、教育された人形のように整いすぎていて鼻につく。
「空いている部屋は1つしかないので、3人用の毛布、用意しておきますね! 仲良く使ってください♪」
「え、ええ、ありがとう」
私の隣でダイキリが引き攣った笑顔を見せ、アルベルトはといえば
心底嫌そうに、重い、重い溜息を吐き出していた。
案内された空き部屋は、不気味なほど整然としていた。
中央に丸い木製テーブルがあり、壁際には本棚や古びた書物が少し置かれているだけ。
スラムの奥地にあるはずの廃屋。
その一室が、なぜこれほどまでに塵一つなく、不自然に清潔なのか。
まるで、誰かが今日この日のために「演劇のセット」を組み上げたかのようだ。
コロナリータはそそくさと布団を運び終えると
「それではお先に、おやすみなさい!」と言い残し、スキップでもしそうな軽やかな足取りで隣の部屋へと戻っていった。
残されたのは、荒れ狂う嵐の咆哮と、私たちの間に流れる微妙に気まずい沈黙だけ。
「……行ったみたいね。アルベルト、さっきの紙切れ、もう一度見せてちょうだい」
私は小声で命じた。
アルベルトは無言でポケットから、あの忌まわしい記憶の断片を取り出し、そっとテーブルに広げた。
部屋のランプが、黄色い光でその紙を照らし出す。インクの滲み具合、紙の酸化の程度……。
察するに、これは二十年前の遺物ではない。
せいぜい数年前。
そこに躍る、スペイン語、フランス語、そして冷徹な番号付きの名前リスト。
「とりあえず、上から解読していきましょう」
私の言葉に、ダイキリが怯えた仔犬のような顔で私を見上げた。
「じゃあ、まずはこの『Juguete de reutilización creativa』ですけど……これ、なんて読むんですか……?」
「スペイン語で『創造的再利用玩具』という意味です」