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アルベルトが、感情を排した声ですぐに応じる。
「『Remade Toy』は英語で【作り変えられた玩具】……。どちらも、血の通った人間を指す言葉とは思えないわね」
「気になるのは、この番号付きのリストです。最初の二つは『GIMLET』と『DAIQUIRI』……どちらもお酒の名前ですが……」
アルベルトが、傷跡をなぞるように指で紙面を追う。
「【創造的再利用玩具】という項目を冠している以上……これは単純にカクテルの名前ではなく、ダイキリ、そして貴方の母親であるギムレットさんのことを指していると見るべきでしょう」
「わ、私とお母さんが……?おもちゃ? そんなの、意味がわからないですよ!」
ダイキリが悲鳴に近い抗議の声を上げる。
私は彼女を宥めることもなく、アルベルトに先を促した。
「根拠は?」
「エカテリーナ、貴方の父……ローゼンタール伯爵は、ダイキリの母が営んでいた酒場『バレンシア』を『お気に入り』だと公言していました。私が独自に調査を進める中で、彼が遺した日記の切れ端を発見したのです」
「は? 初耳なんだけど。そんな大事なこと、どうして今まで黙っていたのよ」
「…言うのを躊躇うほど、おぞましかったからです」
アルベルトの言葉に、私は毒気を抜かれた。
「はぁ……まあいいわ。それで、続きは?」
「ええ。そこにはこう記されていました。『今夜もバレンシアの灯をともす。この店を訪れる女たちは、一様にこの場所をお洒落な隠れ家だと信じ込んでいる。愚かで、愛らしい獲物たちだ。……ここは酒場ではない、私にとってのお気に入りの処刑場だ』と」
その内容に、私は喉の奥がせり上がるような吐き気を覚えた。
処刑場。
父は、あの優雅な琥珀色の空間を、女たちの尊厳を解体し、壊して愉しむための屠殺場だと考えていたのか。
「……その……私の母の『バレンシア』を……? そんな風に……?」
ダイキリの声が震えている。
彼女は両拳を白くなるまで握りしめていた。
母が愛し、彼女を育てたあの場所さえも、あの男にとっては単なる「殺しの舞台」に過ぎなかった。
その屈辱と怒りが、彼女の小さな身体を震わせている。
「そうです。ダイキリ、貴方の名をカクテルから取ったのも、両親だと言いましたね? つまり、あの男は家族さえもカクテル言葉やレシピのパーツに見立てて遊んでいた」