テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夜中、寝苦しい気がして目が覚めた。
真っ暗闇の中、自分の部屋がなんだかいつもと違う気がした。
なんていうか、空気が違う…。
暗闇に目を凝らすと、人影が立っていた。
💚「ひぃっ……!!」
非科学的なことはあまり信じないタイプだけれど、一人暮らしを始めて間もなく、住んでいる建物も古く年季の入った木造アパートとなれば背筋に冷たいものが走った。
💚「誰か…いるんですか?」
自分でももう少し強い言葉を発せれば良かったと歯噛みしながら、その影に向かって話し掛けると、影は動じず答えた。
🖤「1万円」
💚「え?」
🖤「1万円くらい、持ってなかったのか?」
💚「いちまんえん…?お化けじゃなくて、ご、強盗!?」
それにしてはささやかな金額だなと思いながら、俺はその低い声の主と会話を始めていた。
💚「俺、お金そんなに持ってなくて…。でも、どうか命だけは助けてください」
🖤「命?俺にとって彼女は命そのものだったのに」
💚「彼女…。1人じゃないんですか?」
仲間がいるんだ…。男女2人組の犯行か。それじゃあこのまま逃げるのも厳しいかもしれない。いや、相手が女の子なら何とか逃げ切れるかな…。
パァーーーーン。
その時、窓の外を一台のトラックが通り過ぎた。道路に面した窓から、昼間のような強烈な光が照りつける。その時、その人影の顔が一瞬はっきりと見えた。
💚「えっ…」
その人影は端正な顔立ちをした、芸能人のように華やかな男だった。
黒いタキシードに身を包み、身長は高い。髪は真っ黒で、横に分けた前髪から見える瞳がとても澄んでいて、通った鼻筋の下に大きすぎず小さすぎない形のいい唇がある。彼のような男を街中で見かけることはまずなかったから、俺はもしかして夢でも見ているのかと思った。 そしてとても悪いことをするような人には見えないなとも思った。
💚「あの……警察には言いませんから、どうかこのままお引き取りください」
🖤「…………」
男は静かになった。
そして、何も言わずにつかつかとこちらへ向かって歩いて来た。靴は履いたままのようだ。
💚「いたっ!!」
暗闇の中、いきなり手首を掴まれたかと思うと、そのままその男にじっと見つめられている気配がする。俺は男の美しい顔を思い出して、頬が熱くなるのを感じた。
🖤「君が彼女の代わりになってくれるのか?」
彼女?
さっきから何を言ってるんだ、この人は。話が全然噛み合っていない気がする。
💚「あの、あなたは強盗では?」
🖤「失礼な。俺がいつそんなことした」
💚「じゃあなぜこの家に入って来たんですか」
🖤「君が俺を1000円で買ったんだろ」
💚「…………?」
今度は俺が考え込む番だった。
🖤「俺は、君が昼間、店で買ったペアの人形の片割れだよ」
コメント
2件
動き出す時サイズも変わるタイプなのね笑