テラーノベル
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ごく一般的な男の双眸をじっと見つめる。おや、さっきは眼鏡越しで気づかなかったが、なかなかに可愛らしい顔立ちをしているじゃないか。男にしては細身で、目がつぶらで大きい。口元は可愛らしく引き締まっていて、拗ねたような顔を見せれば心臓がうるさく鳴った(ような気がした。俺に心臓はない)
🖤「そうだ。君が俺の花嫁になりなさい」
💚「は?俺、男ですけど」
🖤「じゃあ、君が手近な女の子を紹介しなさい。ただし、俺に釣り合う美人しか受け付けないよ」
💚「そんなこと言っても、俺、女友だちなんていないし」
見た目は可愛らしく、十分魅力的なのに女友だちの一人もいないとは期待外れだ。
こうなればやはり、彼で妥協するしかないだろう。
🖤「俺は花婿人形なんだ。男の方だけ買ったってことは、君、男にも興味があるんじゃない?」
💚「えっ」
男は、顔を赤らめ、もじもじしている。とにかく一人でいると落ち着かない。生涯の伴侶を求めて作られた花婿人形はたった一人では格好がつかないのだった。対になって結婚するために俺たちは作られてきたのだから。とある工場で。たくさんの同じ顔をした同期の中、目の配置も、鼻の高さも、バランスのいい口元も最も美しく造作された俺が、他のやつらに負けるわけにはいかない。バカ店員という運命の悪戯で離れ離れになった先妻には申し訳ないが、独り身であることは花婿人形としてのプライドが許さなかった。
💚「ちょっと言ってることがわからないんだけど…」
🖤「君、名前は?」
💚「は?」
🖤「いちいち男と呼ぶのも気が引けるし、主人というのもよそよそしい。第一、君は今夜から俺の妻だし。さっさと名前を教えなさい」
💚「了承してないんだけど…妻とか」
🖤「いいから。うかうかしていると短い夜が明けてしまう」
ぶつぶつ不納得なその男はしぶしぶながら亮平と名乗った。中々素敵な名前じゃないか。
🖤「亮平、それではこれから早速初夜を迎えよう」
💚「え?は?なんで?」
俺は2人で寝たら、隙間もないような小さなシングルベッドに亮平を押し倒した。
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展開はやーい笑