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__その瞬間、赤い煙がロシアの体を包んだ。その場の全員が咳き込んだあと、ゆっくり彼の方を見やる。
身長は一体どのくらい伸びただろう。10cmほどだろうか。服装はかなり重そうなコートに変わっていた。
「……これで戦いには備えられるはずだ」
ソ連は淡々と言い放った。戦力としてはかなり有効な一人である。以前のようにアル中ではないといいのだが。
その後の話し合いでは今日はとりあえず交代で見張りをしながら休み、明日から戦いに行くことになった。煙でリヒテンシュタインが体調を崩してしまったそうで、スイスはまだ前線に行けないらしい。
翌朝、世界を知らない小鳥の鳴き声で俺たちは目覚めた。朝食は簡単に済ませて、スイスを中心に作戦を確認する。
「まずは、ベラルーシとベルギー。武器の特性的にかなりの接近戦になりそうだけど、大丈夫かな?」
二人は同時に慣れていると答え、武器の状態を確認し始めた。ベラルーシの目が完全にヤンデレのソレで恐怖以外の何ものでもない。
「あと、昨日聞き忘れていたね、ルーマニア。吸血っていうのはどんなもの?」
「誘惑して敵と接近した後、あれやこれやで血を吸うの。貧血状態にさせれば、国は自然に弱っていくわ」
その後聞いたが、ルーマニアは吸血鬼とサキュバスのハーフ、そして人間の間に生まれた存在だそうでさまざまな能力を持っている。
「ポーランドって確かに天使の羽だけど、回復なんてほんとうにできるの?」
「え、えっと、前実験された時の能力が、まだ残ってるから、」
スイスは次々と国たちに質問をしていき(もちろん俺も含め)、立ち位置を決めた。彼曰く、いくつかのグループにわけて複数方向から攻める作戦らしい。
俺の所属するグループにはイギリス、フランス、ノルウェー、ベルギーがいた。ベルギーが一番前に立ち、フランスと俺で真ん中に、そしてイギリスが後ろから援助してくれる仕組みだ。
他はフィンランド、デンマーク、ソ連、ベラルーシのグループやエストニア、イタリア、ルクセンブルク、ルーマニアのグループだ。スペインとオランダは武器の性質を考えてグループから距離をとって攻撃を与え、ポーランドは上からちょっとした武器で奇襲を仕掛けたり治療にあたるらしい。
「よし、作戦決行。健闘を祈ってるよ」
俺たちは戦場に向かった。
ライヒタングルは少しばかり身長が伸びているように感じる。もしかしたらすでに周辺の国がいくつか吸収されているのかもしれない。俺は目で合図をし、イギリスに矢を射るよう指示した。矢は直撃はせずにかすめる程度だったが、ライヒタングルがそれに気を取られているうち、ベルギーが一気に打撃を与えた。
「効いてる気がしないよ……」
ベルギーが困惑したように言う。それぞれのグループの最前列が次々と多方面から攻撃を加えたものの、ライヒタングルが倒れる気配は無かった。
「最後列、一斉射撃!」
スイスの代わりに指揮を依頼されたフィンランドの合図で、エストニアとイギリスが巧みな攻撃を放った。ついでにフィンランドもあの白い死神よろしく頭を狙って撃ち抜いていく。しかしライヒタングルは元気なままだった。
次に活躍するのは第二列。それぞれのグループは平行四辺形を回転させたような形状になっていて、第二列には二人がいる仕様だ。もっとも人数が多い上武器の威力も高いため、平常時は体力を温存して第一列と最後列で攻撃が足りなかった時に襲撃することになっている。
「なんかさ、あいつの様子おかしくね?」
彼らが攻撃を始める前に、まだ酒の入っていないオランダがライヒタングルの方を見ながら呟く。よく見ると奴の体に凹凸ができて不規則に動いている。まるで何かが飛び出したがっているかのように。
「全軍待機の上目標を注視、念の為距離を取れ」
フィンランドは少し後退り、自分についてくるよう指示した。そのうち凹凸の出現する周期が短くなり、大きさも増していって、ついには__。
「き、きみは、まさか……!」
上空で様子を見ていたポーランドが、口をあんぐりと開けていた。