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ドイツ帝国×プロイセン
B…..L….???
もうなんでもありのぐっちゃぐちゃシリアス系です
地雷の方はブラウザバック推奨!
あの日、俺は息子に殺された。
忘れもしない。雨の日だ。
俺は着々と力を付けてゆき、領土もプロイセンの地域から大きく外れるほどでかいものになっていた。俺は自分を誇っていた。
これからも永遠にプロイセンの栄光が薄れることはない。
間違いなく、俺が覇権国家になる。
そう、本気で信じていた。
「…..父さん」
息子は気味が悪かった。
目が真っ黒なんだ。まあ、俺も実際目が黒く、遺伝なのかと言ったらそうかもしれないが、….”黒い”の次元が違う。
ブラックホールみたいに、ハイライトも映らない不気味な目。
でも、サイコパスだとかうつ病だとかそういうことではなく、基本的に無害で、時々甘えてくる、まあ可愛らしいヤツだった。
いつかコイツに俺の後継を任せるかもしれない。その事実は知っていたが、少なくとも数十年は俺がこの土地に君臨するだろう。俺はそう思っていた。
「なんだ、何か用か?」
息子はゆっくりと俺に近づいてきた。
俺は何も警戒していなかった。いや、逆に、この状況で警戒しようなんて思いつく奴はいるのだろうか?こればかりは仕方ないと思いたい。もう戻ることのない過去の事だけど。
息子は俺の腹を短剣で一刺しした。
「….あ?」
俺は動揺した。今の状況を脳が理解してやっと痛みが俺を襲う。声にならない叫びが出た。俺は膝をついて床に崩れるように倒れた。
本能的に腹を手でふさぐ。が、生暖かいその血は止まらなかった。ぬるぬる気持ち悪い感触ときつい鉄の匂いが俺を侵食していく。俺は息子を見た。
息子はずっと大きく見えた。….息子は、俺をあざ笑うように見下ろしていた。
「何のつもりだ、…..ッ」
かろうじてそう言った直後、俺の口からゴボッと血が溢れた。ああ、もう無理だ。俺は直感的にそう思った。
息子はそんな俺を心配するような表情も何も見せず、不気味な真顔を保ちながら口を開く。
「後継ぎの儀式だよ、父さん」
「神聖ローマだって死んだんだ。だから俺が父さんを殺さなきゃ」
頭がおかしいのか、コイツは?
俺はそう思った。
なんで殺す必要がある、よりによってなんで今?俺は意識が朦朧としている中頑張って思考を巡らしていた。
「父さん、もう”プロイセン王国”は要らないんだよ」
息子はふっと笑った。俺は息子の笑う顔を今初めて見た。
「ドイツは帝国になる」
お前は俺の顔面をグーで殴った。
それからの記憶はない。….多分、この後すぐに死んだんだろう。
俺は終始意味が判らなかった。だけど、今は確実に息子を恨んでいる。
プロイセンを穢した。
プロイセンを殺した。
お前が俺の息子じゃなければよかった。
俺は本気でそう思った。
俺は基本的に死後の世界というものを信じていなかった。
所詮ニンゲンの作り話。ニンゲンの死後の世界があっても、国の死後の世界は無いだろう。俺はそう思っていた。でも、今は、死後の世界があると確信を持って言える。何故なら、今現在俺は死後の世界にいるからだ。
死後の世界は意外と生きやすい。
戦争も民族対立も無い。みんな気ままに暮らしている。
あの日、オーストリアとみていた丘の上からの景色も、
ドイツらしい町並みも、
この世界にはなんでもあった。
だから俺はこの死後の世界が大好きだった。
大好きだったのに。
お前は突然現れた。
いつもの丘に登ると、背の高い軍服の青年が突っ立っていた。
俺はその後ろ姿に非常に見覚えがあった。
「…..ドイツ帝国、?」
俺は憎しみのこもった声でつぶやいた。
その青年がゆっくりとこちらを向く。
「~~~~~ッ、!!!」
勢いよく口を手で覆う。吐いてしまう所だった。
….それよりも。
「….父さん?」
ドイツ帝国、….息子の目は、
最後に見た時よりずうっと暗く黒くなっていた。
「なンで、….お前が此処に?」
今の俺はひどい顔だろう。絶望の顔だろうか、恐怖の顔だろうか、憎しみや怒りの顔だろうか?鏡が無いので実際にはわからないが、きっとどれかの顔をしているだろう。
「敗けたんだ」
俺は手のひらが爪で貫かれるほどに強く拳を握った。
「….は?」
俺はずんずんと堂々な歩みで息子に近づく。
「敗けたって?」
息子は口を開いた。
「世界大戦が起こった。
セルビアの青年がオーストリア皇太子を殺した。俺はオーストリアと同盟を結んでいたから参戦した」
悲しみも何も籠っていない声で息子は話し始めた。
「敵国はイギリス、ロシア、フランス、…アメリカ。
味方はオーストリアにブルガリアにオスマン、…イタリアは同盟組んでたけど裏切った」
俺は困惑した。
世界大戦?
急に言われても頭に入るはずがなかった。
でも、今はその世界大戦とやらの無い様はどうでもよかった。
「テメェ、…..敗けたってどういうことだ?」
「そのまんまだ」
「違う!!!」
俺は声を張り上げた。
「俺を殺しておいて?帝国になって?挙句の果てにはセカイタイセンで敗戦?んで死んでこっちに来たと?」
「….巫山戯るな!!プロイセンの栄光に泥を塗るつもりなのか!?」
息子はそんな俺の気迫にぴくりともせず、….むしろ、ぱあっと笑って話し始めた。
「でも父さん、俺凄く強くなったんだ」
「このピッケルハウベ、…実は父さんの奴を最後まで使ってたんだ、父さんみたいに偉大になれるようにって、….お守りみたいな感じで」
俺は食い気味で反論した。
「何が”俺みたいに偉大に”だよ!!!敗けてんじゃねーかッ、!!!」
必死に、必死に、訴えるように俺は続けた。
「お前なんかが息子じゃなければよかった!!!!
そうすれば、今でも偉大なるプロイセンが続いてたはずなのに!!!!!」
ドイツ帝国は笑ったままだった。
そして、とある紙を俺の前に差し出した。
「父さん、それヴェルサイユ条約って言う、…敗戦したあとの条約だ」
俺はそれを三分の一読み終わったところで、ぐしゃっとその紙を握り潰した。
俺は怒りに震えていた。
「父さんがあそこまで頑張って創った”統一ドイツ”
そして、俺が頑張って引き継いだ”統一ドイツ”」
「俺が全部、壊しちゃった」
狂っている。
俺はフーフーと息を荒くし、デコに青い筋を浮かせた。
「冗談じゃない!!!!!」
俺は息子の胸ぐらを思い切りつかんだ。
「なんだって俺はお前なんか産んだんだろうな!?!?俺がどういう思いで戦ってきたのかも知らないくせに、!!!」
ドイツ帝国はやはりぴくりとも表情筋を変えず、またも口を開いた。
「アンタだって、もうとっくに死んだ亡国如きがなんだって俺の気持ちを理解してくれるんだ?」
冷たい空気がひゅっと目の前を通り過ぎる。
「あれは最悪の戦争だった。仲間も自分も敵も中立国も、何もかもが信じられなかった。
みんな死んだ、みんな燃えた。だけど俺は最後まで戦ったんだ。父さんの為に。父さんになりたくて。父さんが偉大になったあまり死んだように、俺も強くなったあまりに死にたかった」
「父さん、父さんが俺を狂わせたんだよ」
「父さんがいなければ俺は生まれなかった。父さんがいなければあんな野望は生まれなかった。父さんがいなければもっと戦争は早く終わっていたかもしれない」
「父さんがドイツなんか作らなければ、ね」
脳が、金槌で叩かれたように痛い。
このままでは、俺さえも狂ってしまいそうだ。
「父さん」
もう何も言わないでくれ。
俺の名前を呼ばないでくれ。
憎しみでどうにかなりそうなんだ。
怒りでどうにかなりそうなんだ。
どうか、もう、俺のことを父さんなんて呼ばないでくれ。
「ローマ帝国も、神聖ローマ帝国も、スペイン帝国も、大英帝国も、死んだ」
「プロイセンも、死ぬんだ!」
死後の世界の死後の世界はない。
ここで俺は死ねない。
だけど、俺は死にたい気分になった。
国はいつか滅びる。
そんな簡単なことを、なんで今の今まで理解できなかったのだろう?
ドイツに沼りました(定期)
イベリア半島にも沼りそう(おい)
ヨーロッパ史が面白すぎるのが悪い!!!
コメント
2件
いいぞ世界史ィ……このまま作者様をあらゆるカプに沼らせて、神小説を増やすんだ‼はははァ! 失礼いたしました。
うわああああ親子おおおおおおおおお!!!!