テラーノベル
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「ブラッスリーは、フレンチダイニングのことだ。駅前の大通りに面した店だからわかると思うが、もし見つからなければ連絡しろよ」
話して聞かせると、「そうなんだ……」と納得したらしい返事があり、「先に店で待ってるからな」そう伝えて通話を終えた。
会社の外へ出て、肩に掛けていたスーツの上着に袖を通した。
電車の中で、(すぐには来ないだろうから、飲んで待ってるか)と、腕組みをする。
以前は待ち時間は無駄なようにも感じていたが、今は彼女を待つことにも気持ちの余裕が持てていた。
(こうして待っているのも悪くないと感じるなんてな…)店に入り、席に着いて思う。
……オーダーしたドライシェリーを飲みながら、店の外を見るともなく見ていると、しばらくしてあいつが走ってくるのが視界に入った。
あんなに急いで、「……可愛いやつ」呟いて、思わず笑ってしまう。
「お待たせ!」言って、彼女が目の前でハァと息をついて、
「あれ? 今日って……」と、俺の恰好を上から下まで眺めた。
「……なんだよ?」
テーブルにグラスを置いて尋ねる。
「……スリーピースなんだ。いつもは、ノーネクタイの方が多いのに」
じっと見られていることに三つ揃いがそんなに物珍しいのか? と思いつつ、「ああ、今日はディレクターズミーティングがあったからな」と、話した。
彼女が席に着き、グラスを合わせて軽く乾杯をした後で、
「スリーピースが、すごくカッコいいなと思って」
不意討ちで彼女が仄かに顔を赤らめて口にして、吊られてこっちまで赤面しそうになった。
メインのフォアグラ添えのステーキを食べながらも、彼女がちらちらとこちらを見てくるのが、気になって仕方がない。
「そんな見るなよ」
グラスからワインを飲んで、低く言い含めると、
「だって、今日ってネクタイもきっちり締めてて、いつものカジュアルな感じと違って、いいなって思って」
ますます熱視線で見つめられる羽目になり、さすがに照れくさくなってくる。
無言で咳払いをして、ネクタイを締め直すと、
「……そういう仕草も、好き……」
とか言われて、もはや照れが隠せなくなって、「……いい加減にしろ」と、彼女から目を逸らした。
……結局、彼女が俺の方を見ずにいたのは、デザートのクリームブリュレを食べている時だけで、
締めのコーヒーを飲みながら、しまいには照れを通り越して、笑えてくるようだった──。
コメント
1件
読みました〜!スリーピース姿の社長を見つめる彼女さんの「そういう仕草も、好き……」が破壊力すごすぎます。あれは無理、照れますよ……!😳 あと、待ち時間さえ「悪くない」と思えるようになった社長の変化がじんわりきました。二人の距離がちゃんと縮まってるんだなあって。デートの空気感が甘くて、読んでてこっちまでニヤニヤしちゃいました🥀
#恋愛
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芽花林檎
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