テラーノベル
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夜。
部屋の電気もつけないまま、
涼ちゃんはベッドに仰向けで寝転がっていた。
「……」
今日は、いつもと違った。
身体が重い。
呼吸も浅い。
胸の奥がじわじわ苦しくて、
うまく力が入らない。
“ああ”
ぼんやり思う。
“今日かもしれない”
怖い、というより、
静かな諦めに近かった。
「……」
震える指でスマホを手に取る。
通話履歴。
一番上。
若井。
少し迷ってから、押した。
コール音。
数回鳴って、
『……もしもし?』
眠そうな声。
その瞬間、
少しだけ安心してしまう。
「……起きてた?」
なるべくいつも通りの声を作る。
喉が痛い。
でも隠す。
『今起きた。どした?』
「んー……なんとなく」
小さく笑う。
『なにそれ』
若井も少し笑う。
いつもの空気。
それが嬉しくて、
少しだけ苦しくなる。
「……今何してたの」
『寝てたわ普通に』
「はは、ごめん」
『別にいいけど』
若井は完全に普通だった。
まさか涼ちゃんが、
ベッドからほとんど動けない状態だなんて思ってもいない。
「……」
涼ちゃんは天井を見る。
ぼやける視界。
でも声だけはちゃんと聞こえる。
『そういやさ、今日元貴が——』
若井が話し始める。
他愛ない話。
スタジオのこと。
最近のこと。
くだらない笑い話。
「……ふふ」
涼ちゃんは相槌を打つ。
本当は、
もう喋るのもしんどかった。
呼吸をするだけで疲れる。
でも、
それを気づかれたくなくて。
いつも通り返す。
『……涼ちゃん?』
「ん?」
『今日静かだね』
「……そう?」
『眠い?』
「……ちょっと」
嘘。
本当は違う。
でも若井は、
『あー、なら早く寝ろよ』
軽く笑うだけ。
気づかない。
当たり前だ。
涼ちゃんが隠してるから。
「……若井」
『んー?』
名前を呼ぶ。
それだけで、
少し胸がいっぱいになる。
「……ありがとね」
ぽつり。
『は?急に何』
若井が笑う。
「……感謝を伝えたくて」
『怖いわ』
「ふは」
小さく笑う。
でもその声は少し掠れていた。
『……ほんとに大丈夫?』
若井が一瞬だけ聞く。
ドキッとする。
「……大丈夫」
すぐ返す。
『ならいいけど』
若井は深く考えない。
その優しさが、
今は少し痛かった。
「……」
涼ちゃんは目を閉じる。
若井の声が遠くならないように、
スマホを耳に押し当てながら。
次回10000
皆さん、やりますねえ〜
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