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夜。
真理亜の部屋の窓には、カーテン越しに柔らかな月明かりが差し込んでいた。
――静かなはずなのに、心は騒がしかった。
ベッドの上に座り、膝を抱えるようにして、真理亜は独り言をつぶやく。
真理亜:「どうすればいいんやろ……」
ここ数日で、真理亜は7人の男子たちからそれぞれの想いを受け取った。
まっすぐに告白してきた駿佑
嫉妬を隠さず伝えてきた大吾
自分の気持ちを後回しにしてきた丈一郎
“優しさの仮面”を外してくれた和也
「好き」がわからないまま隣にいてくれた謙杜
“仮面の自分”を脱ぎ捨てた恭平
そして、ずっと支えてくれていた流星――
真理亜:(みんなが、私を想ってくれてる。でも、私が“誰か”を選んだら、残りの6人の心を、きっと――)
真理亜:「壊してしまうかもしれない」
声にした瞬間、胸がぎゅっと締め付けられる。
真理亜:「私は……何も知らないまま、ただここに来ただけやのに……みんなが、私に優しくしてくれた。それが嬉しくて、楽しくて……気づかんふりしてた。“これは友情”やって」
でも、それは違った。
彼らは、それぞれの形で――**“好き”**を伝えてきた。
心が、押しつぶされそうだった。
ふと、スマホが振動する。
画面には、大吾からのLINE。
「外、ちょっとだけ出てこられる?」
戸惑いながらも、真理亜はスリッパを履き、玄関を開けた。
外はほんのり涼しく、月がきれいに輝いていた。
門の前に立っていた大吾は、優しく笑っていた。
大吾:「夜分にごめんな。ちょっとだけ、顔見たくなって」
真理亜:「ううん、大丈夫。……どうしたん?」
大吾は数秒黙って、ゆっくり言葉を紡ぐ。
大吾:「真理亜ちゃん。……今、しんどいやろ?」
真理亜:「えっ……」
大吾:「俺だけちゃうって、わかってる。みんな、それぞれ真理亜ちゃんに想いを伝えてる。ほんで、君がその全部にちゃんと向き合おうとしてるんも、伝わってくる。せやから、今夜は何も言わへん。ただ――これだけ、覚えといて。どんなに悩んで、どんなに迷っても、“君が誰かを選ぶこと”で、君が自分を責めたり、傷つけたりせんように。俺は、それだけが一番、嫌やねん」
真理亜の目に、涙がにじんだ。
真理亜:(私を“好き”って言ってくれる人がいて、“責めないで”って言ってくれる人もいて、私は――なんて幸せで、なんて苦しいんやろ)
真理亜:「……ありがとう、大吾くん」
震える声で、ようやく言えたその言葉に、大吾は微笑んだ。
大吾:「おやすみ、真理亜ちゃん。……また、明日な」
彼が去ったあと、月の下に取り残された真理亜は、空を見上げた。
真理亜:(私は……誰の手を取ればいい?誰も傷つけずに、終わる方法なんて……ほんまに、あるんやろか?)
その夜、眠れないまま朝を迎えたのは、真理亜だけではなかった。